赤ちゃんは母乳やミルクを飲みながら、空気も一緒に飲み込んでいます。また、消化器官の発達も未熟です。そのため、体内にはガスがたまりやすいのです。この記事では、新生児のお腹が張る原因と対処法について解説します。
また、お腹の張りは病気のサインのこともあります。疑わしい病気についても解説していますので、赤ちゃんの様子と照らし合わせてみてください。
1. 新生児のお腹の張りは「ガス」がたまっているのかも?
赤ちゃんのお腹が張るのは、決して珍しいことではありません。お腹が張る主な理由は、「ガスがたまっているから」です。便秘になったり、ゲップやおならがうまく出なかったりすると、ガスがたまってお腹が張ります。ガスがたまると母乳やミルクを吐き戻したり、食欲がなくなったりすることもあります。
このようなお腹の張りは、病気のサインの可能性もあるため注意が必要です。母乳やミルクを吐きやすい、飲んでくれない、発熱などの異変があった際は、小児科を受診することをおすすめします。注意すべき症状については後ほど解説します。
また、新生児でも便秘になることがあります。いつもと排便リズムが異なる、うんちをするときにうなる、泣く、便が硬い、母乳やミルクの飲みが悪いといった様子が見られたら、便秘の可能性を考えてみましょう。赤ちゃんの便秘の原因や対処法については「病院に行くタイミングは?赤ちゃんの便秘、原因と対処法」の記事をご参照ください。
2. 新生児の体内にガスがたまりやすいのはなぜ?
新生児の体内にガスがたまりやすいのは、消化器官や腹筋が十分に発達していないからです。ガスがたまるしくみについて見ていきましょう。
新生児の腸内環境が整うまでには時間がかかる
赤ちゃんは無菌状態で生まれ、母親など周囲の環境から細菌を受け取りながら、一人ひとり固有の腸内細菌叢(そう)をつくっていきます。胎児のときは胎盤を通じて栄養をもらっていた赤ちゃんは、生後、母乳やミルクから栄養を摂取するようになります。しかし、新生児の頃は腸内細菌叢が未発達のため、母乳やミルクをうまく消化できず、ガスがたまる原因となります。
なお、腸内細菌叢は生後3ヶ月くらいから大きく発達し、3歳頃までに菌の種類が決まるといわれています。
母乳やミルクと一緒に空気も飲んでしまう
赤ちゃんは母乳やミルクを飲むときに、空気も一緒に飲み込むことがあります。体内に空気がたまり、吐き戻しが起こるのを防ぐためには、ゲップやおならなどで空気を外に出す動作が重要です。しかし、新生児は腹筋が未発達のため自分でゲップを出すことが難しく、お腹が張ってしまうことがあります。
3. 新生児のお腹がパンパンのときの対処法
日頃のケアに注意していても、ガスがたまってしまう場合があります。お腹がパンパンのときの対処法をご紹介します。
母乳やミルクの飲み方を工夫
母乳やミルクの早飲みは、一緒に空気を飲み込みやすく、お腹にガスがたまることがあります。お腹の張りが気になるとき、ミルクの場合は新生児向けの乳首や、ミルクがゆっくりと穴から出てくるような乳首に替えてみましょう。母乳の場合は、お乳が出過ぎないように授乳前に2〜3割ほど絞ってから与える、授乳後は絞り切らずに残しておくなどの工夫が必要です。かかりつけの小児科や専門家に相談することをおすすめします。
ゲップでガス抜き、体操やマッサージで解消
ゲップやおならを出して、お腹パンパンを解消する方法は、以下の二つが代表的です。
(1)授乳中や授乳後にゲップさせる
授乳中や授乳後にゲップをさせることで、飲み込んだ空気を外に出すことができます。縦抱きにして赤ちゃんのあごを大人の肩に乗せ、おしりを腕で支えます。背中を優しくトントンして、下から上にさすってあげましょう。目安時間は約3〜5分で、手を少し丸めて行いましょう。吐き戻しの汚れを防ぐために、膝や肩にタオルを乗せて行うのもおすすめです。
5分たってもゲップが出なければ、吐き戻しが喉につまらないよう横向きの姿勢で寝かせてあげましょう。消化が促進されるよう右側を下にして寝かせます。あおむけの姿勢は、吐き戻した際に窒息する恐れがあるため避けます。
母乳の場合は胃に空気が入りにくく、必ずゲップを出さないといけないわけではありません。体質によってはなかなかゲップが出ない赤ちゃんもいます。おならやしゃっくりで、自然に排出できている可能性もあります。
(2)マッサージや体操でガスを出す
マッサージや体操を取り入れると、ゲップやおならが出やすくなり、ガス抜きできることもあります。
●「の」の字マッサージ
赤ちゃんをあおむけにして、向き合う姿勢を取ります。その後おへそを中心に、指先で「の」の字を書くようにやさしくマッサージします。決して力は入れず、軽くさするイメージで行いましょう。便秘解消とガス抜きの両方に効果的な方法です。
●足の体操
あおむけに寝かせた赤ちゃんの足側に座り、足が「M」の形になるよう足首を優しく持ちます。そして、片足ずつゆっくりと曲げ伸ばし運動をします。このとき力は入れず、無理に足を伸ばさないよう気を付けましょう。
●腹ばい運動
腹ばい(うつ伏せ)の姿勢になると自然にお腹へ圧がかかるため、腸の動きが促進され、ガス抜き効果が期待できます。必ず大人が様子を見ながら行いましょう。
マッサージや体操は満腹時を避けて、お風呂あがりや、授乳前のおむつ替えなど赤ちゃんの機嫌が良いときに行います。
こんなときはすぐに小児科へ
新生児の体内にガスがたまるケースは珍しくないものの、病気のサインである可能性も。具体的に考えられる病気と、主な症状は以下のとおりです。もし当てはまる場合は、すぐに小児科を受診しましょう。
●腸閉鎖、腸閉塞
腸閉鎖は腸の一部が途切れている先天性の病気です。これにより食べ物が胃や腸でたまり、膨張してしまう腸閉塞が起きている可能性があります。主な症状は、お腹の張り、血便、胆汁の混ざった黄色い液体の吐き出しなどが挙げられます。早急な手術が必要です。
●腸重積
腸重積は腸の一部が重なり合う病気で、生後3カ月〜1歳頃によく見られます。血便が出たり、突然不機嫌になったりウトウトしたりを繰り返すなどの症状が代表的です。また、いつも以上に激しい泣き方をすることや、お腹が張って嘔吐することもあります。肛門から造影剤を注入し腸の位置を戻しますが、手術が必要な場合もあります。
●胃軸捻転症
胃軸捻転症は胃がねじれてしまう疾患で、新生児や乳児に多く見られます。主な症状はお腹の張りや腹痛、嘔吐です。これにより、母乳やミルクを飲みたがらない、機嫌が悪くずっと泣いている、ゲップが出ない代わりにおならがたくさん出るなど、いつもと異なる様子が見られます。また、あおむけに寝ると胃のねじれが悪化するため、抱っこしないと泣き止まないケースもあります。胃は生後3カ月までに位置が固定されるため、多くの場合は成長するにつれて自然治癒します。
●肛門狭窄症
肛門狭窄症は、肛門が狭くなり便が出にくくなる状態を指します。うんちが出にくい、細い、便秘になりやすい場合は注意しましょう。小児科、小児外科で検査を受ければ肛門狭窄症が判別でき、場合によっては手術治療を行います。
●乳糖不耐症(二次性)
主に0〜2歳に見られる病気で、胃腸炎などをきっかけに、乳製品で下痢を起こしやすくなる病気です。お腹の張りや下痢、酸っぱい臭いの便が出るなどの症状が見られ、場合によっては吐き気や嘔吐を伴うこともあります。胃腸炎の発症後、2週間以上下痢が続くのであれば、豆乳ベースの人工乳に一定期間切り替えるなどの対応を行います。
●消化管アレルギー
ミルクに含まれる牛乳のタンパク質によってアレルギーが起こり、ガスだまりや下痢、嘔吐の症状が現れます。まれに、母乳でも症状が起こることがあります。アレルギー用ミルクを利用しながら経過観察をします。
4. まとめ
新生児のお腹が張る原因と、ケア方法について解説しました。
赤ちゃんのお腹の張りはよくあることです。授乳時の赤ちゃんの姿勢や哺乳瓶の乳首を変えたり、マッサージや体操を取り入れたりするなど、日常的なケアで改善する場合もあります。赤ちゃんのお腹の張りに悩んでいる方は、今回紹介した方法をご自宅でも実践してみてください。
万が一、お腹の張りだけでなく別の症状が表れていたり、赤ちゃんの具合が悪そうだったりしたら、かかりつけの小児科を受診するなどの対応が必要です。各疾患の症状と照らし合わせながら、赤ちゃんの小さな変化に気を配ってみましょう。
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監修:今西 洋介
(いまにし ようすけ)
■新生児科医、小児科医、小児医療ジャーナリスト
日本小児科学会専門医/日本周産期新生児学会・新生児専門医。小児公衆衛生学者。
富山大学医学部卒業後、都市部と地方部の両方のNICUで新生児医療に従事する。
Xアカウント「ふらいと」(@doctor_nw)やニュースレターを通じて、医療啓発を行いつつ子どもの社会問題を社会に提起している。
監修書籍に『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』『ぼくのかぞく ぼくのからだ』など