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コロナやインフルエンザに打ち勝つ「唾液力」

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスク生活は3年目に突入しています。しかし、今では欠かせないマスクがさまざまな健康問題を招いていることをご存じでしょうか。特に口まわりの健康に影響していると指摘されており、実は感染症予防のためにつけているマスクが、かえって人の免疫力に影響を及ぼす可能性があるのです。

マスク生活がなぜ、感染症を招く恐れがあるのでしょうか。本記事では、ウイルスの感染リスクを下げる方法や、日常的なマスク着用が引き起こす健康リスクなどについて解説します。

1. 湿度を保つとウイルスは生存できない

新型コロナウイルスの感染対策により、2020、2021年は季節性のインフルエンザの感染者数が例年と比べて大幅に抑えられました。しかし今年の冬は、インフルエンザが流行する恐れがあるのではないかと考えられています。

その理由は、昨年まで徹底されていた水際のコロナ対策が緩和され、海外からウイルスが持ち込まれているためです。加えて、2年間もインフルエンザの流行を抑えられたことで、日本人のインフルエンザに対する免疫力が落ちている可能性が懸念されていることから、今冬は新型コロナウイルスと季節性インフルエンザがダブルで流行する“ツインデミック”になる恐れがあると懸念されています。

それでは、少しでも感染リスクを下げるためにはどうしたらいいのでしょうか?そのポイントの一つに湿度が挙げられます。

1961年、G.J.ハーパーが発表したインフルエンザウイルスの生存率を調べた実験によると、温度が7~8度で湿度20~25%の低温かつ乾燥した環境下では6時間後のウイルスの生存率は63%でしたが、温度や湿度を上げるに従って徐々に生存率は下がることが判明しました。

また、温度20.5~24度で、湿度20~25%では6時間後の生存率は66%でしたが、同じ温度で湿度49~51%では生存率は3~5%まで低下し、さらに温度32度、湿度が49~51%以上の環境では、ほぼ0%になったのです。

これらの研究から、湿度を高く保つ環境下ではウイルスの生存率は著しく低下することがわかりました。加湿器などを活用して湿度を一定に保てば、季節性インフルエンザの感染リスクを下げることは可能なのです。

 

2. マスク着用が引き起こすさまざまな問題

 
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外出時や人と会う際はマスクの着用が当たり前となりました。

私は仕事柄、かねてからずっとマスクをしていましたが、一般の方であればコロナ禍以前はマスク生活とは程遠かったのではないでしょうか。しかし、今では日本人のマスクに対する意識はとても高く、1,000人を対象に行ったマスクに関する調査では、半数以上の人が「新型コロナウイルスが収束しても、マスクを着用したい」と回答したそうです。

しかし、最近ではマスクの着用によるさまざまな健康被害が指摘されています。
マスク生活によって息苦しさや頭痛を引き起こすほか、口まわりの健康状態が悪化している人は多くいらっしゃいます。

鼻は“天然のマスク”といわれているのをご存じでしょうか。鼻毛や鼻腔粘膜でウイルスやほこりなどが体内に入るのを防ぎ、さらに喉を保温保湿するなどして、細菌やウイルスの感染を予防しているためです。本来、人は鼻呼吸が一般的でしたが、マスクの着用が日常化したことで鼻呼吸ではなく口呼吸になるケースが増えているのです。

口まわりの健康状態に関する問題としては、口呼吸による口腔内の乾燥で口臭が発生したり免疫力が低下したりするほか、口のまわりの筋力低下や滑舌の悪化、表情筋の衰え、肌荒れなどが挙げられます。特に口呼吸による口内の乾燥は、ウイルス感染に最も密接に関わっているといわれています。

さらに、1,063人の歯科医を対象に行った調査では、「マスクの着用は口呼吸の原因になるかと思いますか」という質問に対して、歯医者の95.2%が「かなりなる」「ややなる」と回答しており、口呼吸により唾液の質と量も下がるのではと懸念されています。
マスク生活は口呼吸を誘発して“唾液力”の低下を招き、口内環境を悪化させると考えられているのです。

3. 歯周病は新型コロナウイルス感染のリスクを高める

歯周病に罹患していると、新型コロナウイルス感染のリスクが激増するというデータがあります。

2021年4月にヨーロッパ歯周病学会で発表されたデータによると、歯周病に罹患している人が新型コロナウイルスに感染した場合、健康者と比べると死亡リスクはなんと9倍にまで跳ね上がったそうです。そのほか、集中治療室(ICU)に入院するリスクは3.5倍、人工呼吸を必要とするリスクは4.6倍と非常に高くなっているのです。

インフルエンザについても、口腔環境の影響をかなり受けることがわかっています。

東京歯科大学と東京都府中市の高齢者施設2カ所が2003~2004年にかけて行った研究では、口腔内ケアをしっかり行うことで、ウイルスの感染リスクを10分の1まで減らせると明らかになりました。

具体的に見てみると、口腔内ケアを高齢者1人で行っている施設では、92人中9人がインフルエンザに感染したのに対し、日頃のセルフケアに加えて歯科衛生士による口腔ケアも行った施設では、98人中、インフルエンザ感染者数はわずか1人でした。

この研究によって、改めて口腔内ケアの重要性が証明されたのです。

 

「コロナ禍の今見直そう!唾液の働きを高め口内環境を整えるためのバクテリアセラピー」では、唾液の働き、マスクによるドライマウスのリスクと口内環境を整えるための対策をご紹介します。
 
⇒『コロナ禍の今見直そう!唾液の働きを高め口内環境を整えるためのバクテリアセラピー』を読む

※2022年10月26日 医療法人社団真健会理事長 歯学博士 若林健史先生のセミナー内容を再構成し掲載しました。

若林健史

医療法人社団真健会理事長/歯学博士
日本歯周病学会理事・専門医・指導医、日本臨床歯周病学会・認定医・指導医、日本大学客員教授、日大松戸歯学部歯周治療科非常勤講師。歯周病治療の第一人者。歯科医療に対するいっそうの信頼の確保と、学術的な前進にも貢献している。

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