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コロナ禍の今見直そう!唾液の働きを高め口内環境を整えるためのバクテリアセラピー

今冬は、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの両方が流行する“ツインデミック”が懸念されています。
コロナやインフルエンザに打ち勝つ『唾液力』」では、長引くマスク着用生活が招くさまざまな健康問題について解説しましたが、免疫力を高めてツインデミックを乗り切るためにはどうしたらいいのでしょうか?
 
感染予防には、口腔ケアと唾液力を高めることが鍵であると考えています。今回は、免疫力を高める口腔ケアについて、最新の研究発表を交えながら詳しく紹介します。
 
「コロナやインフルエンザに打ち勝つ『唾液力』」は下記で紹介しています。
「コロナやインフルエンザに打ち勝つ『唾液力』」

1. 唾液にはさまざまな働きがある

唾液の95%が耳下腺、顎下腺、舌下腺からなる「三大唾液腺」より分泌されています。
 
安静時には、耳下腺から23%、顎下腺から65%、舌下腺から4%、残りの8%は小唾液腺から分泌され、健康な成人で1日に1,000~1,500ml分泌されているといわれています。
安静時の分泌量は1時間あたり平均19ml程度ですが、食事など、口に食べ物が入ったり噛んだりすると分泌量は10倍以上に増えます。
これを「刺激時唾液」といいます。
 
反対に、唾液の分泌量が最も減るのは睡眠時です。寝ている間の分泌量は平均2mlほどと、安静時の約10分の1まで減ってしまいます。
ウイルス感染は早朝に起こりやすいといわれているのをご存じでしょうか。
その理由は、寝ているときに唾液の分泌が減少すると、免疫力が低下するためだと考えられているからです。
 
それでは唾液量が低下すると、なぜ免疫力が低下するのでしょうか。
 
唾液の99.5%は水分ですが、残りの0.5%というわずかな量に含まれているアミラーゼやIgAなどが免疫に関わる働きを担っています。
アミラーゼはデンプンを分解する消化酵素の一つです。
消化酵素は食べ物の消化を助ける働きが知られていますが、もう一つ、ウイルスのような外敵が体内に侵入するのをブロックする重要な役割もあります。
 
ほかには、ウイルスに結び付いて感染をブロックするIgA抗体をはじめ、抗菌物質であるリゾチームやラクトフェリン、粘膜の保護機能を持つムチンなどが外敵から体を守ってくれるのです。いかに唾液が免疫に大きく関わるかがわかりますね。
 
ここで1つ、唾液に関する最新トピックスをご紹介したいと思います。
 
大阪公立大学獣医学研究科の松原三佐子准教授と医学研究科の吉里勝利特任教授らによる研究で、唾液の量や濃度は新型コロナウイルスの感染予防に大きく関係するということが明らかになったのです。
 
新型コロナウイルスは、スパイクたんぱく質がACE2という受容体たんぱく質に結合することで感染するのですが、研究では唾液中にACE2に結合する4種類のタンパク質があること、そしてそれらがウイルスのスパイクタンパクとACE2の結合を妨げる働きがあることを突き止めたのです。
 
この研究によって、唾液が新型コロナウイルスからも体を守る重要な免疫の役割を果たしていることが明らかになりました。
 

2. マスクによる口呼吸が唾液の質と量を低下させる

長引くマスク生活は口呼吸を招くほか、マスクのひもで引っ張られることで特に耳下腺にストレスがかかってしまい、唾液の分泌量や質の低下につながると懸念されます。ストレス状態になると唾液の分泌は減り、さらにコロナ禍で会話が減って口を動かさなくなるとより口腔内は乾燥した状況に陥り、乾燥がよりウイルス感染を高めます。
 
他にも、さまざまな健康被害が挙げられています。
 
 
●口呼吸による口腔内の乾燥、口臭の発生
●口腔内乾燥、唾液の減少で免疫力が低下
●マスクと肌の摩擦による肌荒れ
●低酸素による息苦しさ
●マスクのひもで耳まわりが引っ張られ続けることでの頭痛
●口まわりの筋肉の衰えにより、滑舌が悪くなる、たるみやシワの原因にも
 
 
マスク時代は口呼吸による乾燥でウイルス感染に最も密接に関わっているといわれ、口腔ケアをしっかり行うことが重要なのです。

3. セルフケアとプロケアで口腔環境を良くしよう

唾液の分泌量を増やす方法として、3つのポイントをご紹介します。
 
 

三大唾液腺のマッサージ

まず一つ目は、いつでもどこでも誰でも簡単にできる三大唾液腺のマッサージです。
 
日本口腔保健協会のホームページに簡単なマッサージが紹介されています。こちらのイラストにあるように、三大唾液腺である耳下腺、顎下腺、舌下腺をマッサージします。
 
まず耳下腺は、耳の前側に指全体をあて上の奥歯付近を後ろから前に向かって円を描いてマッサージをしていきます。顎下腺は顎の骨の内側、舌下腺は顎下の内側を親指で軽く押さえるとよいでしょう。試していただけると、一度のマッサージでいかに唾液が分泌されるかがわかるかと思います。
 
 

あいうべ体操を取り入れる


二つ目は、「あいうべ体操」という口の体操です。こちらは福岡のみらいクリニック今井一彰先生が考案された体操で、やり方は「あー」「いー」「うー」「ベー」と口を大きく動かし、「べー」のときに顎先に向かって舌を伸ばします。あいうべ体操をすると口輪筋が刺激されて舌が動きやすくなるほか、口輪筋を引き締めて口呼吸を防ぐ効果があるそうです。
 
 

毎日の適切なセルフケアと定期的なプロケアで口腔環境を健やかに

三つ目は「セルフケア」と「プロケア」を適切に行うことです。
 
まずセルフケアでは、毎日の歯磨きやフロスに加え、舌ブラシを活用して舌の衛生状態を保ちます。そのほか、先ほどご紹介したマッサージやあいうべ体操を行って唾液の分泌を促すのもいいですね。
 
プロケアとは、定期的に歯科医師や歯科衛生士にケアと指導を受けていただくことです。日頃のセルフケアだけでは、どうしてもメンテナンスできない場所が生じてしまうため、そういった場所をケアするために歯科医院でクリーニングしてもらいましょう。
 
 

4. バクテリアセラピーで口腔内の菌のバランスを整える

セルフケアとプロケアに加え、もう一つ知ってもらいたいのが「バクテリアセラピー」です。
 
バクテリアセラピーとは、ロイテリ菌に代表されるプロバイオティクスを摂取することで、口や腸の菌のバランスを整える医療技術で、歯科界でも注目されています。
 
ロイテリ菌は母乳に含まれるヒト由来の善玉菌なので、乳幼児から妊婦、高齢者まで安心かつ安全に取り入れることができます。世界保健機関(WHO)は、プロバイオティクスの条件として「安全性が保障されている」「もともと宿主の腸内フローラの一員である」「胃液、胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達できる」「下部消化管で増殖可能」「宿主に対して明らかな有用効果を示す」など、7つの条件を定めていますが、ロイテリ菌はこの条件をすべて満たした貴重な乳酸菌なのです。
 
ロイテリ菌の優れているポイントとしては、まず110を超える国や地域での豊富な使用実績が挙げられます。あらゆる地域や民族で有効に働くことがわかっているのです。そのほか、むし歯菌や歯周病菌を代表する悪玉菌を抑制する、胃酸や胆汁酸に強いため生きたまま腸まで到達できる、ロイテリンという天然の抗生物質を生成するという優れた働きがありながら、副作用の報告がまったくないのです。このように、ロイテリ菌は非常に安全で有効な菌だということが分かっています。
 
歯科医に通ってプロケアを活用しつつ、日頃のセルフケアで唾液を増やし唾液の効果を発揮できる環境づくりなど基本のケアをおこない、ロイテリ菌を使って口内環境や腸内環境をサポートするー。新型コロナウイルスと季節性インフルエンザのツインデミックが懸念される今冬は、この3本柱で外敵であるウイルスから体を守ることがとても大切なのです。

コロナやインフルエンザに打ち勝つ『唾液力』
では感染リスクを下げるために知っておきたいウイルスの生存する環境、コロナ禍で生じるマスク着用での問題や歯周病が新型コロナウイルス感染のリスクについてご紹介しています。
 
⇒『コロナやインフルエンザに打ち勝つ『唾液力』』
を読む

※2022年10月26日 歯学博士 若林健史先生のセミナー内容を再構成し掲載しました。

若林健史

医療法人社団真健会理事長/歯学博士
日本歯周病学会理事・専門医・指導医、日本臨床歯周病学会・認定医・指導医、日本大学客員教授、日大松戸歯学部歯周治療科非常勤講師。歯周病治療の第一人者。歯科医療に対するいっそうの信頼の確保と、学術的な前進にも貢献している。

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