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子どもの免疫力を高めるには?免疫機能の仕組みと免疫力を高める方法

大人と比べると、子どものほうが風邪を引きやすいイメージがあるかもしれません。子どもの免疫力が下がる原因や免疫力を高める方法を知りたい方もいるでしょう。食生活や生活習慣を見直すことで、子どもの免疫力をアップさせ、病気になりにくい丈夫な体をつくれる可能性があります。この記事では、子どもの免疫力の仕組みから、免疫力アップが期待できる食生活や生活環境の整え方まで詳しくご紹介します。

1. 子どもの免疫力は、大人とどう違う?

一般的に、大人のほうが子どもより免疫力は高いイメージがあります。「免疫力」とは本来何を指す言葉なのでしょうか。体を守る防御能力を指す場合もありますが、実は、きちんと定義された言葉ではありません。人間の体に備わっている免疫システムはとても複雑で、何をすれば良くなるという単純なものではないからです。ここでは、まず体に備わった免疫システムについて解説します。
 

「自然免疫」と「獲得免疫」について知っておこう

人間には、病原体から体を守る免疫システムが備わっています。免疫システムは、「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類に分けられます。
 

自然免疫
人間が生まれながらにして持っている免疫機能です。細菌やウイルスなどの病原体が体に侵入すると、病原体を攻撃して侵入を防いだり、体の中で増えないように抑えたりします。自然免疫システムだけでは全ての病原体を防げないため、獲得免疫システムと協力し合って病原体の侵入を防ぎます。

 
獲得免疫
後天的に形成される免疫システムです。自然免疫システムは病原体の種類を問わず攻撃するのに対し、獲得免疫システムは病原体を見分けて攻撃します。そのときに働くのは白血球に存在するリンパ球で、Tリンパ球(T細胞)とBリンパ球(B細胞)の2種類があります。例えば、はしかに初めて感染すると体の中にはしかを専用に攻撃するリンパ球が増え、Bリンパ球が抗体を生成します。さらに、Tリンパ球がはしかウイルスに感染した細胞を攻撃します。はしかが治った後も抗体が残るため、2度目に感染したときは発症を防ぐことができます。獲得免疫システムの特徴を利用してつくられているのがワクチンです。
 

子どもの免疫力は大人より低い?

生まれたばかりの赤ちゃんに備わった血液中のリンパ球数は、小児や大人よりも多いといわれています。細菌やウイルス感染の予防に役立つ免疫グロブリンA(IgA)の産生も出生直後から始まり、生後1年まで増加します。一方、抗体に関係している免疫グロブリンG(IgG)は、母体から新生児に持ち込まれ生後6~8カ月の間に徐々に減少するものの、その後は自分の体で産生するようになり、7~8歳で成人と同程度の数になります。
 
子どもの体には病原体と戦う力が備わっていますが、大人よりも風邪などをよく引くのは獲得免疫システムが未熟だからです。ウイルスや細菌などの病原体に感染しなければ抗体はつくられません。子どもはさまざまな病原体に感染することで、自身の免疫システムを強くしていきます。

 

2. 子どもの免疫力が低下する三大要因

子どもの免疫力は、成人と同じく強いストレスや食生活の乱れなどによって低下することもあります。ここでは、子どもの免疫力低下につながる三大要因を詳しくご紹介します。

 

 

ストレスによる自律神経の乱れに要注意

自律神経とは、生命維持に関わる呼吸や臓器、体温などの働きを調節する神経です。その働き方によって、活動中や緊張時などに優位になる「交感神経」と、睡眠時や休憩時などに優位になる「副交感神経」に分かれ、免疫系と密接な関係にあるといわれています。
 
体内で免疫システムを担っているのは、顆粒球やリンパ球、マクロファージなどの免疫細胞で、血液の中にある白血球に存在しています。例えば、顆粒球は大きめの異物、リンパ球は小さい異物を排除するなど、免疫細胞ごとに異なる役割を担っています。
顆粒球やリンパ球の割合は自律神経がコントロールしており、顆粒球は交感神経の支配下に、リンパ球は副交感神経の支配下にあるとされています。日常生活の中では、通常、交感神経と副交感神経が交互に優位に立ちながら健康を保っています。しかし、何らかの原因で自律神経のバランスが崩れると、免疫細胞の割合が変わり、病気につながるなど免疫力低下の可能性が指摘されています。
 
進学や進級などで生活環境が変化したり、友人関係が上手くいかなかったりする状況は、子どもにとってストレスとなりやすく、緊張状態がずっと続くと、自律神経の乱れにもつながるため注意が必要です。

 

腸内環境の乱れが免疫力を低下させる

免疫細胞や抗体の60%以上は腸にあるといわれています。また、腸内には「ビフィズス菌」「乳酸菌」「ウェルシュ菌」「大腸菌」など約1,000種類、100兆個もの菌が生息し、菌種ごとに群生しながら集団を形成しています。これを、腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼び、腸内の免疫システムに深く関わっているといわれています。
腸内細菌を大まかに分類すると、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類になります。健康の維持には、腸内フローラのバランスを保つことが大切で、理想は「善玉菌2割:悪玉菌1割:日和見菌7割」とされています。
 
腸内フローラのバランスが崩れると、悪玉菌が優勢になり免疫力の低下につながります。腸内環境を良好に保つためには、食生活を意識することが大切です。好き嫌いをせずに、食物繊維、ヨーグルト、発酵食品などをバランスよく摂りましょう。

 

スマホ、ゲーム……夜更かしも免疫力を下げる原因に

睡眠不足も、免疫力を下げる要因となります。近年、夜遅くまでスマートフォンやゲーム機を使用することで、子どもの生活が夜型化し、睡眠障害による体調不良を訴えるケースが増加傾向にあります。心身の健康のためには、睡眠は重要であり、睡眠覚醒のリズムを整えることが大切だとされています。
 
脳内の松果体から分泌されるホルモン「メラトニン」は睡眠を調節する作用があります。朝の日光で分泌が抑えられ、夜になると分泌が高まり、交感神経を和らげて眠気をもたらします。メラトニンの分泌を高めるためには、就寝前のスマートフォンやゲームの使用を控え、暗い室内で就寝するなどの心がけも大切です。また、子どもの成長に必要な成長ホルモンは、夜10時からの4時間に最も活発に分泌し、その条件として深い睡眠が重要であることから、健康のためには早寝も重要です。

3. 子どもの免疫力を高める方法

子どもの免疫力を高めるには、毎日の生活習慣を整えることも大切です。ここでは、免疫力アップの方法をご紹介します。

 

乳製品や発酵食品で、子どもの免疫力を高める

免疫力を高め、健康に過ごすためには腸内環境を整えることも大切です。そのためには、腸内フローラのバランスを善玉菌が優勢の状態に保つことが重要であり、子どものころから「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を意識して摂取するといいでしょう。
 
プロバイオティクスとは、乳酸菌やビフィズス菌などの優れた善玉菌を含んだ食材を指します。代表的なものは、ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料、味噌、納豆などの発酵食品です。一方、プレバイオティクスは、善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やす効果がある食材のことを指します。腸内で消化されにくい食物繊維やオリゴ糖などを摂取するのがよく、代表的な食材に、ごぼう、さつまいも、大麦、きのこ、海藻、玉ねぎ、バナナ、大豆、はちみつなどが挙げられます。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを合わせて摂ることをシンバイオティクスといい、腸内フローラ改善により効果があるとされています。
そのほか、免疫機能を活性化するためには、タンパク質やビタミンなどの栄養素もバランスよく食生活に取り入れることが大切です。

 

規則正しい生活で免疫細胞を活発に!

人間の体に備わった免疫システムは、生活習慣やストレス、睡眠などさまざまな外的要因に影響を受けます。子どもの免疫力アップのためには、生活全体を見直すことも必要だといえるでしょう。
 
まず、規則正しい生活リズムでホルモンバランスを整え、免疫細胞を活発化させるのも一つの方法です。
子どもの生活リズムを整えるには、規則正しい睡眠習慣が大切です。毎朝決まった時間に起きて朝の光を浴び、夜は早めに暗い部屋で就寝することで、睡眠を調節するホルモン「メラトニン」の分泌が安定します。子どもにとって大切な成長ホルモンやメラトニンの分泌を妨げないように、寝る前はゲームなどで遊ばせず、静かに就寝できるような環境を整えましょう。
 
そのほか、食事も決められた時間に、バランスよく摂ることが重要です。1日3回、栄養素が偏らないように意識してください。朝食は就寝時に消費したエネルギー補充や体温上昇の役割を果たすので、規則正しい生活リズムには欠かすことができません。夕食も遅い時間に摂ると睡眠の質や翌日の朝食に悪影響を及ぼすので、決められた時間に摂りましょう。
 
その他、外遊びなどで適度に運動し、太陽の光を浴びることもおすすめです。日光を浴びると、体内でビタミンDが合成されます。ビタミンDにはさまざまな働きがありますが、体内の病原体に対して、必要な免疫機能を促す働きをします。ビタミンDを効率的に合成するには1日15~30分程度、日光を浴びる習慣をつくると良いでしょう。

4. まとめ

この記事では、子どもの免疫力を高める方法についてご紹介しました。子どもの免疫力を高めるためには、日々の食事や生活環境を整えることが大切です。特に、食生活においては、腸内環境を整える食材を摂り入れることが重要です。子どものころに免疫力を高める生活をしていれば、成長しても風邪や感染症に抵抗できる丈夫な体をつくることができるでしょう。

監修:森下 竜一 先生

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授

医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。

また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。

日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。

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