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バクテリアセラピーとは?バクテリアセラピーの特徴と効果が出る理由

「バクテリア」とは細菌のことで、細菌を使って病気の予防や治療に役立てる取り組みは「バクテリアセラピー」と呼ばれています。

予防医学の新しい考え方として、世界中から注目を集める療法です。

バクテリアセラピーという言葉を聞いたことはあっても、詳しくは知らないという人も多いかも知れません。

そこで今回は、バクテリアセラピーとはどんな療法なのかご紹介していきます。

1. バクテリアセラピーとは

バクテリアセラピーとは、予防医学の先進国であるスウェーデンで始まった予防医学療法の一つです。身体に有益な働きをする善玉菌を継続的に摂取することによって、体内にいる細菌のバランスを善玉菌が優位な環境にしていきます。

バクテリアセラピーは、ノーベル医学・生理学賞の審査本部として知られる、世界最大の医科大学であり研究機関の「カロリンスカ医科大学」が中心となって開発されました。今では100以上の国と地域の医療機関に導入されています。

私たちの身体には膨大な数の細菌が常在し、腸内に500~1,000兆個、皮膚に1兆個、口腔内には1,000億個(清潔な状態で)が定着していると考えられています。

常在菌には身体に有益な細菌と害を与える細菌が存在し、前者を「善玉菌」後者を「悪玉菌」と呼びます。

通常では、善玉菌と悪玉菌は均衡を保ちながら共生しています。しかし、このバランスが崩れて悪玉菌が優勢になると、悪玉菌がたんぱく質などを利用する過程で生じる有害物質が全身へ撒き散らされるため、さまざまな病気になるリスクが高くなります。

バクテリアセラピーは、体内の善玉菌を増やすことによって、腸内細菌のバランスを正常に保ち、免疫を高めることで、病気にならない身体づくりを目指します。

2. バクテリアセラピーの特徴

バクテリアセラピーの特徴は、殺菌ではなく菌バランスを整えるという点にあります。

バクテリアセラピーでは、さまざまな菌が使われますが、乳酸菌の1つであるヒト由来の善玉菌を使ったものが有名です。口内由来の菌の中の特に優秀な菌は、「スーパー乳酸菌」とも呼ばれています。

スーパー乳酸菌を使ったバクテリアセラピーは、善玉菌を摂取することで悪玉菌の量を相対的に減らし、菌バランスをサポートしていくため、耐性などで効果が減る心配も少なく、継続的な効果が期待できます。

病気の治療で用いられる抗生物質では、人体に有益な働きをする菌までも殺してしまうことや長期間使用すると菌に耐性がついて薬の効果が低下する可能性がありますが、このような菌を使ったバクテリアセラピーにはそういった心配はありません。

3. バクテリアセラピーに期待できる効果

バクテリアセラピーに期待できる効果は、口の中から全身に及ぶものまでさまざまです。口内由来の菌を使ったバクテリアセラピーでは、次のような効果が期待できます。
 

むし歯菌の原因菌を減らす

バクテリアセラピーを2週間継続することで、むし歯の原因菌の約80%が減少すると言われています。
 

歯周病菌の原因菌を減らす

歯科医による専門的なケアとバクテリアセラピーを行なうことで、歯周病菌が約90%減少することが明らかになっています。
 

口臭を改善する

バクテリアセラピーを1週間程度続けたところ、朝起きた時の口の中の不快感や口臭が気にならなくなったと報告されています。
 

ピロリ菌を減らす

口内由来の菌を30日摂取することによって、約60%の患者のピロリ菌が消滅したことがわかりました。
 

アレルギー症状を軽減する

体内の善玉菌が増えると、免疫細胞が活性化して、アトピー性皮膚炎や花粉症やかゆみといったアレルギー症状の緩和への効果が期待できます。
 

下痢や便秘を改善する

バクテリアセラピーを取り入れて、便の量が増えた、臭いが減ったなどの報告がされています。

4. まとめ

バクテリアセラピーとは、細菌のパワーを病気の治療促進や予防に活用する画期的な手法です。身体に良い働きをする善玉菌を取り入れることで、悪玉菌の力を抑え込み、病気になりにくい身体づくりをしていくことを目的としています。

スーパー乳酸菌は元来ヒトの身体に存在している菌なので、副作用の心配がなく、子どもから高齢者、妊娠中の方まで安心して利用できるため、バクテリアセラピーの中でも、このような菌を使って体内の善玉菌を増やしていくものは有名です。

口内由来の乳酸菌を取り入れることで、口の中や腸内の環境が善玉菌優位な環境になり、健康を維持する効果が期待できます。バクテリアセラピーを継続していくうちに、身体の内側から変わっていくのを実感できるでしょう。

監修:森下 竜一 先生

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授

医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。

また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。

日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。

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