健康診断の結果は悪くないのに、何となく疲れやすい、だるい、頭が痛い、肩こりがする、身体が冷える、眠れない・・・。
そんな症状を「大したことない」と軽く考えているとしたら要注意です。そうした症状から大きな病気に進行してしまう危険性があります。
一度病気になってしまうと、そこから治療を始めても、完治まで時間がかかってしまいます。
そこで、その前の「未病」の段階で病気の芽を摘むことが大切なのです。
今回は、そんな未病の改善方法をご紹介していきます。
いつまでも元気に過ごせるよう、未病を改善しましょう。
1. 「未病」とは
「未病」とは、約2000年の歴史を持つ東洋医学の考え方です。中国最古の医学書『黄帝内経』に出てくる言葉で、その漢字のとおり「未だ病気ではない」状態を指します。つまり「まだ病気ではないが病気になりつつある」段階のことです。
書物の中では「聖人は己の病気を治さずして未病を治す」と書かれています。未病のうちから改善するという考え方は、現代の予防医学に通じるものです。この段階で何か対策をとれば、健康な状態に回復することができるでしょう。
病院で診てもらうほどではないけれど、何となく身体がだるい、頭が痛い、肩がこる、食欲がない、やる気が出ないといった状態は誰しも経験したことがあるはずです。これらの症状は決して気のせいや甘えではありません。
未病の状態をそのまま放置していれば、病気になる可能性が高くなります。病気になってから治療を開始するのでは、回復に時間も費用もかかってしまいます。そうならないためにも、未病に気づいた時点で改善することが大切です。
今、平均寿命100歳時代の到来に向けて、健康寿命を延ばすことが急務となっています。そこでクローズアップされはじめたのが未病の考え方です。いつまでも健康なまま長生きするために、未病の改善に取り組むことが課題となります。
2. 未病の症状
未病の症状は人によってさまざまで、些細に思えることでも身体からのSOSサインかもしれません。
下記に当てはまる項目があったら、未病の状態になっている可能性があるので、早めに対処して改善を目指しましょう。
・身体が冷える
・疲れやすい
・肩こりがひどい
・腰が痛い
・むくみやすい
・食欲がない
・寝つきが悪い
・眠りが浅い
・頭痛がする
・顔色が悪い
上記に挙げた症状は、ほんの一例です。それ以外でも「おかしいな」と感じたら未病を疑ってみてください。忙しいと身体の訴えを見逃しがちです。ちょっとした不調も「気のせい」で済ませず、ゆっくり休養をとって身体を労わりましょう。
3. 未病を改善する方法
未病の改善する方法として「養生」という考え方があるのをご存知でしょうか。養生とは生命を養うこと。つまり、健康に気を配って病気にならない身体づくりをすることです。
養生とは言っても、特別なことをする必要はありません。普段の食事や運動、休養の仕方など、ちょっとした生活改善をすることで、病気を防ぐことができます。具体的な改善策には、次のような3つの方法があります。
方法1)バランスのとれた食生活
方法2)良質な睡眠
方法3)適度な運動
方法1)バランスのとれた食生活
バランスのとれた食事を、ゆっくり時間をかけて食べ、腹八分目に抑えるようにしましょう。
「医食同源」という言葉があるとおり、食事と私たちの健康とは切っても切れない関係があります。
体調を整えるには、旬の食材を使った料理がおすすめです。旬の食材を食べることでその時期に身体が欲するものを補うことができます。栄養豊富で価格も安くなるので、ぜひ旬の食材を食卓に取り入れてください。
方法2)良質な睡眠
良質な睡眠は元気の源です。忙しくても睡眠時間を削るのはできるだけ避けましょう。睡眠不足が未病を招く恐れがあります。理想的な睡眠時間は人によって異なりますが、できれば7〜8時間の睡眠がとれるとよいでしょう。
睡眠は量だけでなく質も重要です。深い睡眠がしっかりとれるよう、就寝前にはリラックスした時間を過ごしましょう。音楽鑑賞やストレッチ、アロマテラピーなど、自分なりのリラックス方法を見つけてください。
方法3)適度な運動
適度な運動は生活習慣病の予防に有効です。
筋力を増やして代謝を上げれば、免疫力もアップして、元気で丈夫な身体になります。運動不足の人は、お風呂上りや休憩の際にストレッチをする、できるだけ階段を使うなど、できることから毎日コツコツ続けましょう。
4. まとめ
未病とは病気と言うほどでもないけれど、健康でもない状態のことです。
この段階で病気の芽を摘むことで、病気自体を防ぐことが可能になります。未病の改善のカギは、食事と睡眠と運動です。
いつまでも元気でいきいきと暮らすために、未病改善に取り組みましょう。
監修:森下 竜一 先生
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授
医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。
また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。
日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。