お口から、 カラダのこと

Menu

  • #食事
  • #免疫
  • #健康
  • #カラダのこと

胃がんとピロリ菌の関係とは?がん検診で早期発見、胃がんリスク低減の対策を紹介

「がん検診の受診で早期発見が重要!三大死因疾患の胃がんを知ろう」では日本人の三大死因疾患であるがんについて正しい知識をつけること、早期発見・早期治療がいかに重要かを述べました。早期発見できれば完治も可能というイメージがある一方で、胃がんの死亡率は意外と高い傾向があります。
 
本記事では胃がんの主原因とされるピロリ菌とは何なのか、ピロリ菌の感染経路や除菌の方法の他、ピロリ菌抑制効果が期待される口腔ケアとバクテリアセラピーの関係など、胃がん予防の対策についてもご紹介します。
 
早期発見の重要性とその理由は下記の記事で紹介しています。
 
リンク⇒「がん検診の受診で早期発見が重要!三大死因疾患の胃がんを知ろう」
 

1. 胃がんの原因トップはピロリ菌

胃がんの原因で一番多いのはピロリ菌です。最初に、がん化するメカニズムについて解説しておきましょう。
 
ピロリ菌の感染によって慢性的な胃炎が起き、症状が悪くなる、治す、また悪くなる、治す……。これを何十回、何百回と繰り返しているうちに胃粘膜の正常な細胞で再発エラーが起きて、がん化してしまいます。
 

たばこや偏った食事、飲酒も胃がんの原因に

ピロリ菌の他にも、喫煙習慣のある人は、ない人に比べて胃がんのリスクが高くなります。たばこイコール肺がんをイメージする人は多いですが、発がん性のあるニコチンやタールを含む唾を飲み込むことが、胃がんのリスクにもつながります。
 
また、食物繊維やビタミンが不足した偏った食事も胃がんリスクを高めます。肉や炭水化物ばかり食べて、野菜が不足しがちな食生活も、胃がんの一因になると考えられています。さらに、過度な飲酒によって胃の粘膜にダメージを与えることが、胃がんの引き金になることもあります。ビールよりも日本酒、日本酒よりもウイスキー、ウイスキーよりもテキーラなど、お酒の中でも特に度数の高いものは、よりダメージが大きいので注意が必要です。
 

ストレスが胃がんリスクを上げる?

胃がんとストレスの関係性についてもご紹介しましょう。人はストレスを感じると、胃がきゅっと反応します。例えば、バリウム検査をしている最中に、耳元で「下のお名前を教えてください」と突然聞かれ、答えると「田中さんにお電話が入っていますが、別の田中さんのようでした……」、そんなたわいもないやり取りをするだけでも、胃は目に見えて縮みます。胃というのはそのぐらい感情に左右される敏感な臓器なのです。
 
私のクリニックでは毎年、子どもの受験シーズンが近づくと、ストレスを抱えたお母さん方の受診が増えます。受験の2週間前、3日前、前日と、目に見えて胃が収縮し、胃痛を訴える人が増えるのです。子どもが受験するたびに胃薬をもらいにくる患者さんも結構いらっしゃいます。強いストレスによって胃の収縮が長期間繰り返されることが、がんの原因にもなります。
 

2. ピロリ菌の感染は乳幼児期に起こる

 

 

胃がんの主な原因となるピロリ菌は、からだに悪影響を及ぼす細菌の一つです。胃の粘膜に感染する細菌で、正式にはヘリコバクター・ピロリ菌と呼ばれます。ピロリ菌に感染すると胃粘膜が炎症を起こし、胃は胃酸によるダメージを受けやすくなります。
 

主な感染は両親からの経口感染

ピロリ菌は不衛生な飲み水や食べ物から体内に入ると考えられています。胃のバリア機能が弱い乳幼児期の感染が最も多く、大人から大人にうつることはまずありません。
 

上下水道が普及する1970年代より以前は、井戸水の使用が一般的だったため、飲み水からピロリ菌に感染する人がたくさんいました。井戸水を飲んでピロリ菌に感染した親が、子に口移しで食べ物をあげるなどしたため、親から子どもに経口感染していったと考えられています。40~50代以上にピロリ菌感染が多いのはそのためです。
 

砂場遊びの後は手洗いの徹底を

衛生環境の改善により、現代の日本の自然環境には、ピロリ菌はほとんど存在しません。そのため、若年層のピロリ菌感染率は大きく低下しています。特に、中高生以下でピロリ菌に感染している人は非常に少なくなっています。そのような中で、より注意したいのが砂場の土です。
 

砂場の土にはいろいろなものが含まれています。コロナ禍で公園の遊具やベンチは消毒してから使う方もいらっしゃるかもしれませんが、砂場の土は消毒のしようがありません。お子さんが砂場で遊んだ後は必ず、忘れずに手を洗う習慣をつけるように言ってあげてください。
 

3. ピロリ菌が消化不良や胃炎の原因になる理由

では、ピロリ菌がからだの中にいると、どんな症状が起きるのでしょうか。ピロリ菌は他の菌と違い、からだに入ったらすぐに症状を起こすわけではありません。しかし、一度感染すると胃の中で長い間ひっそりと生き続ける特徴があります。
 

ピロリ菌は胃の粘膜の中でアンモニアという、胃酸を中和するアルカリ性物質を出します。ピロリ菌は胃の隅っこを間借りして、強い酸性の胃酸にやられないようにひっそりと暮らしています。そのため症状のない人がほとんどです。
 

しかし、常に酸を抑えているため胃の消化が悪くなり、徐々に胃もたれやつかえなどの不快感、膨満感、消化不良といった症状を起こします。このような症状が長く続くと、本来は強い酸性の胃酸に満たされているはずの胃粘膜が、アルカリ性によって障害を起こし、胃炎を発症します。慢性胃炎の症状となって出る人もいれば、運が悪いと胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる人もいます。
 

4. ピロリ菌の除菌方法

自分のからだの中にピロリ菌がいるかどうかは、検査で調べることができます。ピロリ菌の検査には4種類の方法があります。
 

 1. 血液検査
 2. 便検査
 3. 呼気検査
 4. 胃カメラ
 

1つ目は血液検査で、ピロリ菌に対する抗体が血液の中にあるかを検査する方法です。2つ目は便検査をして便から排出されるピロリ菌を検出する方法。3つ目は呼気検査で、吐く息の中のアンモニア量を調べてピロリ菌をチェックします。4つ目は胃カメラで胃の粘膜の組織を採取して、顕微鏡で調べる方法です。
 

これらの検査によってピロリ菌が見つかっても、慌てる必要はありません。ピロリ菌を除去する抗生物質を1週間服用すれば、ピロリ菌の7~8割は除菌が可能です。1回目の除菌療法の効果が出なかった場合は、別の薬に変えて再び除菌を行う二次除菌、さらに薬を変えて治療する三次除菌(自費診療)など、服薬による除菌療法で治療することができます。
 

口腔ケアで口の中をきれいにすることも大切

この他にも、ピロリ菌が棲みつきにくくするために、胃の環境を整える方法もあります。胃をきれいにすることはもちろん、胃につながるお口の中を清潔にする口腔ケアも大切です。
 

腸の調子を整える効果があることで広く知られる乳酸菌は、胃をきれいにする効果もあります。乳酸菌を含む善玉菌を摂取することで、悪玉菌を抑制し常在菌のバランスを整えるバクテリアセラピーは口腔ケアや腸内環境のバランス改善に役立ちます。バクテリアセラピーは口腔内や胃や腸内の菌バランスを整えるだけでなく、ピロリ菌の抑制効果に注目が集まっています。近年、非常に注目されているのがロイテリ菌です。
 

ピロリ菌抑制効果が期待されるロイテリ菌とは

ロイテリ菌とは、からだに有益な善玉菌(プロバイオティクス)の一つです。人の母乳から見つかったロイテリ菌という乳酸菌は、口から摂っても胃や腸まで届き、胃のピロリ菌の抑制効果もある乳酸菌として話題を集めています。ロイテリ菌が産出するロイテリンという物質がピロリ菌を抑制するとして、世界中で研究が進んでいます。ロイテリ菌の摂取をピロリ菌除去に活用する臨床試験も報告されています。
 

5. 早期発見のために検診を受けよう

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大によって、いま大きな問題になっているのが検診の受診率の低下です。以前なら定期的な人間ドックや健康診断によって見つかっていた早期がんが、コロナ禍で検診を1~2年受けないうちにがんが進行していたというケースが増えています。
 

胃がん対策で一番重要なのは、定期的な検査で早期発見することです。早期の胃がんであれば、いまや90%以上が完治するほど医療は進化しています。その一方で、ステージ3、ステージ4の進行がんになると、死亡率が上がるのが胃がんの怖いところなのです。
 

もう一度言います。胃がんは早く見つけることが一番の予防です。胃がんの大きな原因であるピロリ菌がもし見つかったら、服薬による除菌療法を受けましょう。治療によって胃がんのリスクを大幅に減らすことができます。
 

さらに、偏った食事や喫煙、ストレスの多い生活習慣を見直すことも大切です。胃や腸、口腔環境を整えるために、ロイテリ菌のようなプロバイオティクスも積極的に摂取することが胃がん予防には大切です。最近、人間ドックや健康診断を受けていない方は、ご自身や家族のためにも今年は必ず受診するようにしましょう。
 

「がん検診の受診で早期発見が重要!三大死因疾患の胃がんを知ろう」では三大死因のひとつ、がんとは、胃がんを正しく知るための情報を紹介しています。当記事あわせて、人間ドックや健康診断などでがんの早期発見でリスクを軽減しましょう。
 
 

2022年6月2日に開催された、総合内科専門医・循環器専門医・スポーツドクター、秋津壽男先生のセミナー内容を再構成し掲載しました。

 

秋津壽男

大阪大学工学部 醗酵工学科 卒業
酵母醗酵による核酸生成と回収について研究
和歌山県立医科大学 卒業
日本内科学会認定総合内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本禁煙学会認定禁煙専門指導者

おすすめ記事

関連記事