赤ちゃんのうんちは大人に比べるとゆるめです。そのため、下痢かどうか判断しづらく、困ってしまうことがあります。
この記事では、赤ちゃんのうんちの基本的な知識や、下痢と判断する際のポイント、下痢の時に気を付けることや消化のよい食べ物などをご紹介します。
1. 赤ちゃんのうんち、どんな状態が正常?
赤ちゃんのうんちは、大人とは状態がかなり異なります。まずは、どんな状態が正常なのか、時期別に確認しておきましょう。
母乳やミルクだけを飲んでいる時期
赤ちゃんは生まれてから最初の2~3日、ニオイのない、黒緑色のネバネバしたうんちを出します。これを「胎便」といいます。胎便は、お母さんの子宮の中で飲んだ羊水や栄養分を排出したものです。
胎便を出し切った後は、黄色や明るい茶色、緑色のうんちに変わっていきます。緑色のうんちを見るとギョッとしてしまうかもしれませんが、胆汁が酸化した色なので異常ではありません。また、酸っぱいニオイがしますが、これは善玉菌のビフィズス菌がたくさんいる証拠で、健康の証です。
1~2か月頃のうんちは水っぽく、量も少なめ。3か月頃からドロドロ状になります。一般的にミルクより母乳の方が、便が軟らかく回数も多くなる傾向にあります。回数は個人差が大きく、新生児期には1日に10回以上うんちをすることもありますが、徐々に回数は減っていきます。一方、母乳やミルクの量が多くなるにつれて、うんちの量も多くなります。
赤ちゃんのうんちに白いつぶつぶが混じることがあります。これは、母乳やミルクに含まれている脂肪やカルシウムが固まったもので、心配ありません。
離乳食が始まってから
離乳食が始まると、うんちも変化します。
離乳食を始めたばかりの頃は、一時的にゆるくなったり、硬くなったりすることがあります。7か月以降、離乳食中期の頃になると、だんだん形になってきます。離乳食が完了期に近づくにつれ、うんちの形はどんどん大人のものに近くなり、回数も1日1~2回くらいに落ち着きます。
色は、離乳食が進むにつれて茶色っぽくなり、ニオイも大人のものに近くなります。消化機能が未熟なため、食べたものがそのまま出てくることもありますが、心配ありません。
2. 赤ちゃんの下痢はどうやって判断する?
赤ちゃんのうんちは低月齢ほどゆるく、回数も多いので、下痢と区別がつきにくいものです。消化機能が未熟なので、水分や離乳食を多く摂ると、一時的に軟便になることもあります。元気で食欲があり、体重が順調に増えていれば特に心配しなくてよいでしょう。
普段よりも回数が増えて水っぽく、おむつからもれてしまうようなら下痢だと判断します。元気がない、熱がある、吐く、何度も下痢が続くなどの症状があれば、病院を受診しましょう。泣いても涙が出ない、皮膚の張りがなくなっているなどの場合は、脱水症状を起こしている可能性があります。
受診の際は、おむつごとうんちを持参すると診断の役に立ちますが、時間がたつと状態が変わる場合もあります。うんちをスマートフォンなどで撮影しておき、受診の際に見せるとよいでしょう。下痢がいつから始まったか、下痢の回数、熱、食欲や機嫌など、赤ちゃんの様子を伝えることも忘れずに。
3. 赤ちゃんの下痢の原因は?
赤ちゃんの下痢にはさまざまな原因があります。以下に、主な原因をご紹介します。気になる症状がある場合は、ご自身で判断せずに病院を受診しましょう。
ウイルス
風邪のウイルスが原因の場合、発熱、鼻水、咳、嘔吐が見られることもあります。インフルエンザウイルスが原因の場合、突然の高熱で始まります。
細菌
細菌性胃腸炎では、菌の種類によって症状が異なります。激しい下痢や高熱、嘔吐、うんちに血や粘液が混じることも。
アレルギー
食物アレルギーでは、特定の食べ物で下痢の症状が出ます。鶏卵、牛乳、小麦、大豆など身近な食物がアレルゲンとなります。赤ちゃんに初めての食材を食べさせるときは、病院が開いている時間帯に、少量から試して様子を見るようにしましょう。
抗生物質
抗生物質を服用すると腸内の善玉菌が死んでしまうため、下痢の原因となることがあります。
なお、下痢が続いた後に乳糖を分解する酵素が減少し、乳糖を消化吸収しづらくなる「二次性乳糖不耐症」という症状があります。母乳やミルク、乳製品など、乳糖を含むものを取ると下痢が起こります。一時的なもので、時間が経過すると通常、症状は軽快します。乳糖を含まない粉ミルクや乳糖分解酵素薬などを与えて様子を見ます。
4. 赤ちゃんの下痢の対処法
赤ちゃんが下痢になった時の対処方法をご紹介します。
下痢の時のケア期
おむつ替え
下痢のうんちは肌に刺激が強く、肌荒れの原因になります。下痢をしたら、すぐにおむつ替えをしましょう。拭き取るよりも、シャワーや座浴がベター。ぬるま湯で洗い、柔らかいタオルでそっと水分を吸い取るようにしましょう。
下痢のうんちには細菌やウイルスが含まれていることが多いので、おむつ替えの後は石けんで手を丁寧に洗います。
水分補給
湯冷ましや麦茶、ベビー用イオン飲料などを与え、脱水症状を避けます。
下痢の時の食事
母乳・ミルク
母乳やミルクは量を減らして回数を多くしながら様子を見ます。
離乳食
離乳食初期の場合は、離乳食をお休みして母乳かミルクに戻します。離乳食中期以降であれば、1段階前に戻します。
食事は消化のよいものを与えます。ただし、食欲がないときは無理に食べさせずに、水分補給を優先します。
下痢の症状がある間は、野菜スープやみそ汁の上澄みなど。症状が落ち着いてきたら、おかゆ、ベビーせんべい、にんじんやかぼちゃをくたくたに煮てつぶしたもの、軟らかく煮込んだうどんなどを食べさせます。りんごのすりおろし汁など、整腸作用のあるものもおすすめです。うんちが水のような状態のときは汁状のものを、うんちがドロドロになってきたら、食べ物も煮つぶしなどドロドロのものを、が原則です。様子を見ながら慎重に進めていきましょう。
油っぽいもの、肉、糖分を多く含んだ食品、清涼飲料水、繊維の多い野菜、海藻などは避けます。冷たいものも腸を刺激するので控えましょう。
4. まとめ
もともとゆるめの赤ちゃんのうんち。下痢かどうか、判断しづらいことも多いものです。食欲がない、熱がある、吐く、ぐったりしているなど、いつもと様子が異なるなら病院に行きましょう。
そして、おむつかぶれに注意して、消化のよい食べ物を少しずつ与えながら経過を見ていきましょう。
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監修:今西 洋介
(いまにし ようすけ)
■新生児科医、小児科医、小児医療ジャーナリスト
日本小児科学会専門医/日本周産期新生児学会・新生児専門医。小児公衆衛生学者。
富山大学医学部卒業後、都市部と地方部の両方のNICUで新生児医療に従事する。
Xアカウント「ふらいと」(@doctor_nw)やニュースレターを通じて、医療啓発を行いつつ子どもの社会問題を社会に提起している。
監修書籍に『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』『ぼくのかぞく ぼくのからだ』など