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腸活とは?効果的なやり方で体の中から健康に!

「腸活」は、腸のコンディションを整える方法です。腸活の一環として、乳製品や発酵食品などを摂取している方もいるのではないでしょうか。この記事では、腸活を行う目的やメリット、効果的な方法を解説しているので、腸内環境の改善やダイエットなどに関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

1. 腸活とは?

人間の大腸には、さまざまな腸内細菌が生息しています。腸活によって、腸内細菌のバランスを整え、健康な体づくりを目指しましょう。
 

腸活とは腸内細菌のバランスを整えること

腸活とは、食事や運動など生活習慣の見直しを行うことで「腸内フローラ」のバランスを整えることを指します。免疫強化や疲労回復、美容、健康などさまざまな効果が期待されています。
 
「腸内フローラ」とは、腸内細菌の集まりのことです。大腸に生息している腸内細菌は多数ありますが、大きく分けて「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分類できます。これらの菌は種類ごとに縄張り争いをしながら、集団を形成しています。顕微鏡で観察するとフローラ(花畑)のように見えるため、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。
 
なお、腸内フローラを構成する菌の種類や割合は、人によって異なります。指紋のように、全く同じフローラを持つ人はいないといわれており、個人単位で保有する菌の種類は子どもの頃に決まります。その一方で、菌の量や善玉菌、悪玉菌などの割合は、生活習慣や年齢によって変化するため、健康のためには腸内フローラのバランスを最適な状態に保つことが重要です。
 

バランスが整った腸内環境とは?

一般的に、腸内フローラの比率は善玉菌が2割、悪玉菌が1割、日和見菌が7割のバランスが理想的とされています。腸活によって健康状態を整えるには、善玉菌が活発に働く腸内環境を形成、維持することが重要です。以下では、腸内細菌の概要についてご紹介します。

 
善玉菌
健康的な腸内フローラは、乳酸菌などの善玉菌が優勢です。乳酸や酢酸などを産生し、腸内を酸性にすることで、悪玉菌を抑制する働きがあります。その他、消化吸収を促進させ、腸管運動を活発化させるなどの働きもあります。
 
悪玉菌
大腸菌(有毒株)、ウェルシュ菌などの悪玉菌は有害物質を生成する作用があり、過度に増殖すると便秘や下痢、生活習慣病などの原因になる細菌です。
 
日和見菌
腸内環境に応じて善玉菌と悪玉菌のいずれか優勢な菌に加担する細菌で、腸内フローラの中で最も多くを占めています。
 

2. 腸活で得られる3つのメリット

食べ物を消化吸収し、排泄する役割を担う腸には、代謝や免疫に関わる機能も備わっています。ここでは、善玉菌が活発に働く環境を構築することで得られるメリットを解説します。

 

代謝が促進され美肌やダイエット効果が期待できる

腸内環境が乱れると便秘などを引き起こすうえに、代謝機能も落ちてしまいます。便秘で腸内に有害物質がたまると肌荒れなども起こりやすくなります。腸活によって腸内環境が整うと、代謝が促進され、整腸作用につながることから便秘や肌荒れなどの解消にもつながります。
 
腸活のダイエット効果を期待する方もいるのではないでしょうか。腸内環境を整えるために推奨されている食物繊維を含んだ食材は、低カロリーで便通にも良いとされており、美容と健康に良い影響を与えるといえるでしょう。ただし、実際の効果については、これから科学的根拠を取っていくことが必要です。
厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、18歳~64歳の男性は1日約21グラム、同世代の女性は1日約18グラムの食物繊維を摂取することが望ましいとされています。
 
近年は腸内細菌と肥満との関係に注目した研究なども進められています。例えば、太りやすい、やせやすいなどの体質はその人の持つ腸内細菌に関連しているという研究、腸内フローラに注目した肥満症治療の研究などさまざまあります。
 

免疫力をアップさせ、さまざまな疾患を防ぐ可能性も!

免疫細胞の60%以上は腸内に集まっているとされており、これを「腸管免疫」と呼びます。腸内細菌は、腸管免疫の活性化に寄与しているといわれており、腸内環境が乱れると免疫力の低下や、糖尿病や動脈硬化などさまざまな疾患に結びつく可能性も指摘されています。
 
腸内細菌は、食物繊維などを栄養源としていますが、その際に酢酸や酪酸など「短鎖脂肪酸」を産生します。これが、体の中で重要な働きをすることがわかってきました。例えば、腸内の免疫細胞に作用して大腸内でIgAを産生したり、血液を通じて臓器に作用したり、免疫系に作用して炎症やアレルギーなどを抑えたり、全身に影響を与えているといわれています。
 
また、糖尿病や動脈硬化、がん、肥満などと腸内細菌との関連も研究されています。腸活によって、腸管免疫を活性化させることで、免疫力のアップや疾患の予防につながるのではないかと期待されています。

 

精神的な不安状態や不眠の改善

近年では、腸内フローラの構成が精神状態に影響するメカニズムを解明する研究が多く行われており、精神的ストレスがある状態では腸内環境が悪化しているというデータもあります。
また、神経伝達物質のセロトニンの90%は腸でつくられるとされており、脳で用いられる神経伝達物質の生成には腸内フローラが大きく関わっていることが明らかにされています。不安や恐怖を抑制するγアミノ酪酸(GABA)も腸内細菌が産出しているという研究データがあり、腸内環境の変化が精神状態に影響を与えることが示唆されているのです。そのため、腸活によって精神的な不安や不眠といった症状の改善が見込める可能性があります。

3. 腸内環境を整える効果的なやり方

腸内環境を良好な状態に整えるには、善玉菌が優勢である状態を維持することが必要です。日常的に実施することで、腸内環境の改善が見込める方法をご紹介します。
 

 

バナナやヨーグルトの他、発酵食品をバランスよく食事に取り入れる

食生活を改善して善玉菌を増やすためには、善玉菌を含む食材「プロバイオティクス」と善玉菌のエサとなる食材「プレバイオティクス」を摂取する方法が効果的です。プロバイオティクスの例としては、ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、味噌などの発酵食品が挙げられます。また、食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスは善玉菌を増やすことにつながるため、積極的に摂取するのがおすすめです。
これらをより効果的に摂取するには、プロバイオティクスとプレバイオティクスを同時に取り入れる「シンバイオティクス」という方法を取り入れるとよいでしょう。
 
また、免疫機能の活性化を図るには、タンパク質やビタミン、ミネラルといった栄養素をバランスよく摂取することも必要になります。食事から摂取することが難しければ、善玉菌も含め、サプリメントから取り入れる方法も効果的です。
 

適度な運動習慣や有酸素運動で体を動かす

日常的に適度な運動を行うことも、腸内環境の改善に役立ちます。代謝促進や自律神経のバランスを維持する方法としても、有酸素運動は有効です。自律神経のバランスが崩れると腸が適切に働かなくなり、便秘や下痢の原因になったり、悪玉菌が増えたりします。運動習慣がない人は、ウォーキングや軽いランニングなどの有酸素運動から行うことをおすすめします。
 

腹筋運動や「の」の字マッサージをする

腹筋運動やマッサージは、腸内の活性化にも有効です。腸に蓄積した便を押し出す際には腹筋が必要になるため、日常生活に腹筋運動を取り入れることで腸内環境の改善につながります。そのほか、腹筋運動は腹部の血行を改善するほか、自律神経のバランスを整える効果もあります。
 
また、「の」の字マッサージも効果的です。へその周囲で「の」の字を時計回りになぞるようにマッサージすることで、便通が改善する作用が見込めます。
 

規則正しい生活リズムで1日を送る

不規則な生活リズムは、腸内フローラのバランスが崩れる要因になると考えられています。睡眠時間が不足していると自律神経のバランスが崩れやすく、腸の動きをコントロールする副交感神経が適切に働かなくなる恐れがあります。
 
さらに、睡眠不足と同様に、過度なアルコール摂取や喫煙も腸内環境を悪化させる要因です。アルコールの過剰摂取は消化器に悪影響を与え、腸内フローラの悪玉菌が増加します。また、喫煙は交感神経を刺激し、腸の活動を抑制してしまいます。そのため、腸内環境を整えるには、規則正しい生活リズムで過ごすことが大切です。
 

4. まとめ

この記事では、腸活によるメリットや、効果的な腸活の方法をご紹介しました。腸活によって腸内フローラの状態を整えることで、さまざまなメリットが得られます。食生活の改善や適度な運動、規則的な生活を心がけましょう。
また、腸活では、プロバイオティクスやプレバイオティクスの摂取によって善玉菌を増やすこともおすすめです。善玉菌が活発な腸内環境を整えることで、体の中から健康な状態を目指していきましょう。

監修:森下 竜一 先生

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授

医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。

また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。

日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。

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