バクテリアセラピーは、近年注目を集めている口腔ケア(オーラルケア)のひとつで、むし歯や歯周病予防の観点から歯科を中心に広がりつつあります。
こうした新しい治療法を考えた場合、効果はもちろん、「いくらかかるのか」「他の歯科と比べて高いのか安いのか」などの費用面が気になるところです。
そこで今回は、バクテリアセラピーにかかる費用の相場について紹介したあと、その効果やコストパフォーマンスについてもお伝えしていきます。
1. バクテリアセラピーの費用の相場
バクテリアセラピーの費用は、歯科クリニックで行う場合、一か月でおよそ3,000円~5,000円に診断費を加えた金額が一般的な相場になります。
個人的に自宅で行う場合は、サプリメントなどの費用がかかります。サプリメントも一か月で3,000円~5,000円程度が相場です。
2. バクテリアセラピーとは
バクテリアセラピーとは、善玉菌を体内に取り入れ、常在する菌の質やバランスを改善することで、疾病の予防や治療に役立てる医療技術です。
口腔内(口の中)の菌バランスから胃や腸まで、体全体の菌バランスを整えることに繋がります。
バクテリアセラピーの「バクテリア」は細菌のことです。
細菌と聞くと、「身体に害を与えるもの」のようなイメージがありますが、バクテリアセラピーは、人体にとって有益とされる善玉菌を利用します。
3. バクテリアセラピーの様々な効果
バクテリアセラピーには様々な効果が期待されています。その中の3つをご紹介しましょう。
バクテリアセラピーでは、さまざまな菌を利用しますが、今回はバクテリアセラピーで使われる菌の中でもメジャーなヒト由来の善玉菌を使用すると仮定して、その効果をご紹介していきます。
効果1)むし歯予防
効果2)歯周病予防
効果3)口臭予防
効果1)むし歯予防
むし歯予防はバクテリアセラピーの効果のひとつとして知られています。
例えば、継続的に口内由来の善玉菌と呼ばれる乳酸菌を摂取することで、むし歯に罹るリスクを低減させる効果があることが分かっています。
菌を含むトローチを使った臨床試験では、試験前に比べむし歯の原因菌の数が大きく減少したと報告されています。
効果2)歯周病予防
歯周病予防もバクテリアセラピーの嬉しい効果のひとつです。
この善玉菌は歯肉の腫れや歯こうの量も低下させることがわかっています。
歯肉に腫れのある被験者にこの菌を含むガムを摂取させた試験では、14日間のガム摂取後、歯肉の腫れも歯こう指数も低下したという報告があります。
効果3)口臭予防
口臭予防もバクテリアセラピーの効果として期待できます。
口内由来の善玉菌は口臭の大きな原因となる歯周病菌を減らすことで、口臭を抑える効果があることがわかっています。
バクテリアセラピーによって、腸内の菌のバランスが整うことで自然なお通じが期待できるのです。
実際に、慢性的な便秘の幼児に毎日この菌を与えたところ、排便回数が増加したとの研究報告もあります。
また、便秘が解消されることで、吹き出物などの肌トラブルを抑え、美しい肌を保ちやすくなる可能性もあります。
4. バクテリアセラピーの方法
バクテリアセラピーは、歯科医院で受けることもできますが、個人でも簡単にできます。
善玉菌を含んだタブレットやトローチを夜、寝る前にゆっくりと口の中でなめるだけでOKです。
5. 一般的な口腔ケア
バクテリアセラピーと比較するために、一般的な3つの口腔ケアについて説明します。
口腔ケア1)歯みがき
口腔ケア2)マウスウォッシュ
口腔ケア3)ガム
口腔ケア1)歯みがき
歯みがきは口腔ケアの基本です。食事の後は、丁寧に磨くことが大切ですが、歯と歯の間の汚れは、ブラッシングだけでは十分に落とすことができません。
また、舌や歯茎など口腔内全体の掃除には適していません。
口腔ケア2)マウスウォッシュ
マウスウォッシュは、口の中に含んで吐き出すタイプと歯みがき粉の代わりに使う液体の歯みがき液の役割を果たすものと2つあります。
歯みがきだけでは落とし切れなかった舌や歯茎など腔内全体を清潔にし、虫歯や歯周病、口臭などを防ぐ効果が期待できます。
ただし、殺菌効果の高いマウスウォッシュはヒトに有益な善玉菌も殺菌してしまうので要注意です。
口腔ケア3)ガム
ガムも口腔ケアのひとつとして用いられます。
実際、キシリトールというむし歯を予防するとされる成分が含まれたガムを食べると、むし歯の原因菌が減少したことがわかっています。
キシリトール同様、口内由来の善玉菌を含むガムを用いた実験では、菌を含むガムを食べた被験者の口腔内のむし歯原因菌が減少しことが報告されています。
6. まとめ
バクテリアセラピーは費用も安く、自分で行うこともできる口腔ケアです。
バクテリアセラピーを行うことで、口腔ケアだけでなく、腸内環境を整えることもでき便秘解消や美肌効果なども期待できます。
欧米では一般的になっているバクテリアセラピーを、一度試してはいかがでしょうか。
監修:森下 竜一 先生
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授
医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。
また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。
日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。