歯茎が赤く腫れてきたような気がする、歯が少し長く見えるようになった気がする、口臭が気になる、歯磨きをすると歯茎から出血するなど、口腔内のトラブルはとても気になるものです。
大切な歯を失ってしまう原因のひとつである歯周病にならないため、毎日の生活習慣をどのように改善すればよいのか、簡単にできる歯周病対策をご紹介します。
1. 歯周病とは
歯周病とは、歯こうの中の細菌が歯と歯茎の間に入り込み、歯茎に炎症を起こしたり歯の奥の骨を溶かしてしまったりする病気です。なかには歯が抜けてしまうまで重症化することもあります。
歯周病の中でも歯肉炎と歯周炎に大きく分けられ、歯茎が腫れている状態を歯肉炎、歯槽骨や歯根膜など歯の根元の方にまで炎症が広がった状態を歯周炎と呼びます。
甘いものを食べすぎたり、歯磨きが十分でなかったりすると歯の表面に歯こう(細菌のかたまり)ができ、歯と歯ぐきの間で増殖します。歯こう1グラム当たり1億以上の細菌が含まれていると言われています。
歯こうの中の細菌は唾液中のカルシウムやリン酸と結びつき、歯磨きだけでは落とすことが難しい歯石へと変化します。これらが歯と歯ぐきの間で増殖を続け、歯周ポケットを形成していきます。
酸素の少ない状態である歯周ポケット内では嫌気細菌である歯周病原因菌がどんどん増殖し、細菌の出す毒素によって歯の奥の歯槽骨が溶かされてしまうのです。
2. 生活習慣の見直しでできる歯周病予防
まずは、日頃からできる簡単な歯周病予防の方法をご紹介していきます。
・禁煙
・食生活などの見直し
・軽い運動
・マウスピースなどの活用
・正しい歯磨き
・歯科検診
禁煙
禁煙は歯周病予防にはとても有効な手段と言えます。
喫煙は歯周病だけでなく口腔内のさまざまなトラブルを引き起こすと言われています。他にも全身に渡る影響、第三者への影響も考えられるため、できるかぎり禁煙に努めることが望ましいと言えます。
食生活などの見直し
食生活の見直しは、歯周病だけでなくメタボリックシンドロームの予防にもなります。甘いものを控える、野菜などを多く取り入れ、よく噛んで食べるメニューにするなど、日頃の食生活を見直してみてください。
軽い運動
軽い運動でストレスを発散するのも、歯周病予防のひとつと言えます。ストレス発散は全身への好影響も期待できるため、可能な範囲で無理のない運動を、日頃から取り入れるようにしたいものです。
マウスピースなどの活用
マウスピースなどの活用は、夜間コントロールができない習慣に効果が期待できます。
歯ぎしりを指摘されたことのある方はマウスピースを、口呼吸を指摘されたことのある方は鼻呼吸用テープを活用してみてください。いずれもドラッグストアなどで気軽に購入できるものです。
正しい歯磨き
正しい歯磨きは歯周病予防の基本になります。一本一本時間をかけ、歯こうを残さないよう丁寧に磨きましょう。
また、一部の乳酸菌は歯周病のリスクを低下させる効果があるという研究結果が報告されています。一般市場の他、歯科医院でも取り扱っているところも多いようです。
歯科検診
歯科検診もおすすめです。
毎日正しい歯磨きで丁寧に磨いていても、どうしても完全に歯こうを取り除くことは困難です。定期的に歯科検診を行い、専門医による口腔ケア(オーラルケア)を行うようにしてください。
歯周病予防には、お口由来の乳酸菌もおすすめです。
その中の一部の乳酸菌には、歯周病菌を抑制する効果が認められており、口腔内の菌環境を整えることも期待できるため、口臭やむし歯の予防にも繋がります。
また、胃や腸の菌環境も整えることができるため、体の中から健康になると注目を集め「スーパー乳酸菌」といわれています。
3. 歯周病の原因となる生活習慣
歯周病の予防方法をご紹介してきましたが、逆に歯周病の原因となる生活習慣はいくつもあります。日頃何気なく行っていることも、実は歯周病の原因となっているかもしれません。
今回は、その中でも代表的な生活習慣を5つご紹介していきます。
原因1)喫煙
原因2)食習慣
原因3)ストレス
原因4)歯ぎしりや口呼吸などの習慣
原因5)不十分な歯磨き)
原因1)喫煙
喫煙は歯周病の最大のリスク因子であると言われています。喫煙によるタールのこびりつきで歯こうが付きやすくなってしまったり、有害物質によって歯周組織の血行障害が引き起こされたりします。
喫煙者は非喫煙者と比較して、歯周病罹患割合が約2~8倍(本数と年数による)にもなるそうです。
原因2)食習慣
食習慣にも原因が潜みます。甘いものを多く食べていると、歯こうがつきやすくなってしまいます。また、やわらかいものばかりを食べていると唾液の分泌量が減り、細菌の増殖に繋がりやすくなります。
不規則な食生活で栄養が偏ると免疫力が低下し、歯周組織の抵抗力が低下し歯周病の罹患に繋がることも懸念されます。
原因3)ストレス
ストレスがかかると免疫力が低下したり、喫煙量が増える、夜更かしし歯磨きを怠る、暴飲暴食をするなど、生活習慣の乱れに繋がりやすくなったりします。
原因4)歯ぎしりや口呼吸などの習慣
歯ぎしりや口呼吸などの習慣は、歯周組織へ物理的に作用し歯周病を悪化させやすくしたり、口腔内が乾燥することで歯こうの生成を助長したりといった影響が考えられます。
原因5)不十分な歯磨き
不十分な歯磨きは歯の隙間や歯茎の間の歯こうを除去できず、残った歯こうは歯石になってしまう可能性があります。
食後に歯磨きをせず就寝してしまうような習慣は、歯こうや歯石の生成のみならず、むし歯の発生を助長してしまう可能性もあります。
4. まとめ
日頃の生活習慣が歯周病を引き起こしている可能性は否定できません。何気なく行っている習慣を見直しましょう。そして定期的に歯科医院に行くようにしましょう。歯周病にかからない、健康な歯や歯茎を目指してください。
監修:森下 竜一 先生
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授
医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。
また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。
日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。