最近、美容や健康に敏感な人たちの間で話題になっている「菌活」という言葉をご存じでしょうか。
菌活とは、身体に有益な働きをする菌を食事から取り入れて、身体の内側から健康できれいになることを目指した健康法です。
菌を取り入れるというと難しく感じるかもしれませんが、菌は私たちの身近にあるいろいろな食材に含まれています。
代表的なものには、きのこやヨーグルト、チーズ、納豆などがあり、これらを食べるだけで、善玉菌が増えて腸内の働きを改善することができるのです。
今回は、菌活で得られる効果と誰でも簡単にできる菌活のやり方をわかりやすく解説していきます。
1. 菌活とは?
菌活とは、身体に有効な働きをする菌を食事から積極的に取り入れる健康法のことをいいます。菌活によって腸内環境を整えることで代謝や免疫力が高まり、疲れにくく病気になりにくい健康な身体を手に入れることができます。
私たちの腸には、500種類以上、数にして500から1,000兆個にものぼる細菌が生息しています。腸内細菌は、大きく分けると善玉菌、悪玉菌、そして、そのどちらか優勢なほうに加勢する日和見菌の3種類の菌がいます。
細菌の総量はほぼ決まっていて、悪玉菌が増えると善玉菌が減り、反対に善玉菌が増えると悪玉菌が減ります。悪玉菌が増加して腸内環境が乱れると、便秘や下痢、免疫力の低下など身体にさまざまな不具合が生じます。
そのため、腸内細菌の中で善玉菌の占める割合を正常に保ち、腸内細菌のバランスを整えることは、健康のためにとても重要なことなのです。
菌活では、腸に有益な働きをする菌を食事から取り入れて、美容と健康に役立てていきます。
もともと菌活という言葉は、「菌」と書いて「きのこ」と読むことから、当初はきのこそのものを食べることを意図していましたが、ヨーグルトやチーズ、納豆といった発酵食品全体が対象になり、広く知られるようになりました。
2. 菌活で得られる効果
菌活で得られる主な効果には、次のようなものがあります。
効果1)便秘予防
効果2)免疫力アップ
効果3)美肌効果
効果1)便秘予防
便秘予防には、腸内環境が関係しています。
現代の食生活は、肉類や脂肪分の多い食事になりがちで、こうした動物性食品に偏った食事が続くと、悪玉菌が優勢になり、腸の動きが鈍くなってしまい、スムーズな排便が妨げられてしまいます。
菌活で善玉菌を増やして腸内環境を改善することで、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が活発になり、体に不要な水分や老廃物が排出されやすくなるため、便秘改善効果が期待できます。
効果2)免疫力アップ
腸内環境の正常化は免疫力アップにもつながります。
腸は私たちが口から入れたものを消化・吸収するだけの器官ではなく、全身の免疫を司る役割を果たしています。腸には人間の免疫細胞の7割近くが集中しており、免疫力は腸の健康に左右されると言っても過言ではありません。
菌活で腸内が健康に保たれていると、免疫力が高まって、風邪やインフルエンザなどにかかりにくくなります。
効果3)美肌効果
美肌効果は、便秘解消と関係しています。
肌荒れやニキビ、アレルギー性皮膚炎などの原因の一つになるのが便秘です。腸内環境が悪く、便秘がちな人は、血液中に腸内の有毒ガスが流れ出るため、肌トラブルに悩まされることになります。
菌活で便がスムーズに排出されるようになると、肌荒れの悩みも解消され、健やかな肌を手に入れることができるはずです。
また、菌活で積極的に取り入れる発酵食品には抗酸化作用もあるため、肌の老化を抑える働きも期待できます。
3. 菌活の効果的なやり方と注意点
菌活の効果的なやり方は、シンプルです。
きのこ類や発酵食品をはじめとする善玉菌が喜ぶ食べ物を積極的に摂取するだけでOKです。
毎朝味噌汁を飲む、食後のデザートにヨーグルトを食べるなど、毎食一品取り入れることから始めてみましょう。食事に取り入れるのが難しい場合は、サプリメントもおすすめです。
また、菌活食材の代表的なものに、ヨーグルトに含まれる乳酸菌が挙げられます。乳酸菌とは、乳酸を作り出す細菌の総称です。腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を正常化して、下痢や便秘を改善する整腸作用があります。
乳酸菌は200種類以上に及び、それぞれの特徴や効果が異なります。その中でもおすすめなのが、人由来の乳酸菌です。中でも胃酸や胆汁酸に強い菌は、生きたまま腸に届いて悪玉菌の働きを抑制します。また、効果に関するエビデンスが乳酸菌のなかでも抜群に多いことで、世界中の研究者に知られています。
菌活を行う上で最も大切なことは、習慣化することです。口から入れた善玉菌はやがて便となって体外へ排出されてしまいます。そのような菌をはじめとする菌活食材を日頃から積極的に摂ることを心がけましょう。
4. まとめ
菌活は、誰でも簡単に始められる健康法です。
菌活で腸内環境を整えることで、病気になりにくい健やかな身体を手に入れることができるはずです。特に、乳酸菌は腸内で悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を整えてくれる働きがあります。
乳酸菌の多くは、口から摂取しても胃酸や胆汁酸によって死滅してしまいますが、生きたまま腸まで届くものは悪玉菌を撃退し、腸の働きを助けてくれることがわかっています。
菌活を始めるにあたり、何より大切なことは継続することです。一時期のブームで終わらせるのではなく、日常的な習慣として定着させましょう。まずは「これなら続けられそう」と思う食材から食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。
監修:森下 竜一 先生
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授
医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。
また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。
日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。