バクテリアセラピーは、優れた善玉菌によって、体内の悪玉菌を抑制して善玉菌を活性化させるスウェーデン発の予防医学で、最近では、日本でも着実に広がりを見せています。
実際、インターネットで検索してみるとわかりますが、多くの歯科医院がバクテリアセラピーを取り入れています。
ただ、バクテリアセラピーが本当に安全で効果があるのか不安だという方も少なくありません。
そこで今回は、バクテリアセラピーの効果について、口腔内とそれ以外に分けてご紹介していきます。
バクテリアセラピーにかかる料金や実際に行う方法、副作用などのリスクについても紹介しますので、参考にしてみてください。
1. バクテリアセラピーの主な効果
近年、予防医学のなかで注目されているバクテリアセラピーには、様々な効果が期待されています。
一般的に、ヒトにとって有益な細菌を「善玉菌」と呼び、有害な細菌を「悪玉菌」と呼んでいますが、バクテリアセラピーは「善玉菌を取り入れて、悪玉菌を抑制すること」を意味しています。
その中でも口腔内における効果は、むし歯菌、歯周病菌、口臭の原因となる原因菌を減少させることにあり、多くの臨床実験でも証明されています。
2. バクテリアセラピーの仕組み
「善玉菌を取り入れて、悪玉菌を抑制すること」は、体内に常在する菌の質やバランスを調整し改善することで、その仕組みを利用したバクテリアセラピーは、様々な疾病に対する予防や治療に役立っています。
バクテリアセラピーでは、前述の善玉菌であるプロバイオティクス(生きた乳酸菌)を摂取しますが、そのなかでも口内善玉菌等の乳酸菌が注目されています。
バクテリアセラピーの研究では、腸内でも生存できる菌が腸内の健康維持をサポートすることなどが実証されていて、口腔内のみならず全身の健康に役立つことも明らかになっています。
3. バクテリアセラピーの副作用
バクテリアセラピーは、ヒトにとって有益な善玉菌を摂取するものですので、副作用はありません。
特に、ヒト由来の乳酸菌は、新生児の時から自然に消化管の中で生態系を構築している菌なので、赤ちゃんや高齢者でも安心して摂取できます。
4. 口腔ケアだけじゃないバクテリアセラピーの効果
バクテリアセラピーは口腔以外にも有効であり、その効果についてもご紹介していきます。
効果1)便秘解消
効果2)美肌
効果3)ピロリ菌減少
効果4)アレルギー症状の抑制
効果1)便秘解消
便秘解消もバクテリアセラピーによって期待できます。
摂取した善玉菌が、腸内で天然の抗菌物質をつくって、悪玉菌の増殖を抑えて腸の運動を活発にし、自然なお通じを促します。
慢性的な便秘の幼児に毎日乳酸菌を与えたところ、排便回数が増加したとの研究報告もあります。
そのほかにも、高齢の方や成人に対する治験報告もあります。
効果2)美肌
乳酸菌等の善玉菌によって便秘が解消されることで、吹き出物などの肌トラブルの回避が期待できます。
また腸の蠕動運動が活発になることで新陳代謝にも影響し、肌荒れやくすみなどを予防することも考えられます。
効果3)ピロリ菌抑制
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)抑制についても、効果があることがわかっています。
乳酸菌等の善玉菌を含有するプロバイオティクスを摂取することによって、胃酸抑制剤と併用でピロリ菌の抑制に対して有益な効果を得られることが分かっています
効果4)アレルギー症状の抑制
アレルギー症状の抑制も、バクテリアセラピーの効果として挙げられます。
善玉菌を摂取することで、免疫機能のコントロールを促し、アレルギー性障害を抑制します。
また、アレルギー症状を家族に持つ乳児にヒト由来の乳酸菌を摂取させた試験では、呼吸器系アレルギー疾患の発症リスクを低減させたことも報告されています。
5. バクテリアセラピーの費用
バクテリアセラピーの費用は、歯科クリニックなどで治療を行う場合、およそ3,000~5,000円の治療費に診断料がプラスされた金額になります。
市販されているヒト由来の乳酸菌などの善玉菌を含んだサプリメントなどを個人的に購入することも可能で、サプリメント代のおよそ3,000~5,000円程度ではじめることができます。
6. バクテリアセラピーの方法
個人でバクテリアセラピーを行う方法は非常に簡単で、ヒトの口内から採取された善玉菌を含むタブレットを就寝前になめるなど、食品で手軽に始められます。(この容易さもヨーロッパで広がっている要因の一つになります)
タブレットのほかにもトローチタイプやガムの場合もあります。
また、歯科クリニックなどで歯周ポケットに直接ヒトの口内から採取された乳酸菌の液体を注入する方法もあります。
7. まとめ
バクテリアセラピーは口腔ケア(オーラルケア)だけでなく、健康維持という点でも効果が期待されます。
口の中のトラブルというピンポイントのケアだけではなく、健康増進、全身疾患の予防といったトータルバランスで考えると、コストパフォーマンスの高い治療と言えそうです。
欧米ではすでに一般的になっているバクテリアセラピーを試してみてはいかがでしょうか。
監修:森下 竜一 先生
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授
医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。
また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。
日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。