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がん検診の受診で早期発見が重要!三大死因疾患の胃がんを知ろう

日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡するといわれています。非常に怖い、けれども残念ながら身近な病気の1つです。しかし近年では検査法や治療法が確立され、早期に発見、治療をすれば、がんは治せる病気になっています。特に胃がんは早期発見と胃がんの原因の一つとなるピロリ菌の除菌が重要です。
 
その一方で、胃がんの死亡率が意外に高いことはあまり知られていません。問題なのは、がんはこんなにも身近な病気でありながら、がんのことを正しく理解している人がまだまだ少ないことです。本記事ではがんを正しく知り、早期発見・早期治療がいかに重要かを紹介します。

1. がんは日本人の三大死因の一つ

私は長年、総合内科専門医、循環器専門医として多くの患者さんを診てきました。当然ながら、がんが好きな人など一人もいません。誰もがかかりたくない、それほど嫌われている病気である反面、残念ながらがんは我々日本人にとって、とても身近な病気なのです。
 
がんは脳卒中、心臓病と並ぶ日本人の三大死因の一つです。つまり、日本人のほとんどがこの三つの病気のいずれかで亡くなっています。なかでも日本人の死亡原因として最も多いのはがんです。2020年にがんで死亡した人は37万8385人にも及びます。
 

性別によって異なるがんの種類

がんといってもさまざまな種類のがんがあります。全体として死亡者数が最も多いのは肺がんですが、性別によって罹患しやすいがんの種類は異なります。男性のがん罹患者は前立腺がんや大腸がんが多い特徴です。男性の死亡者数が最も多いのは肺がん、次に胃がんが続きます。
 
女性のがん罹患者数のトップは乳がんで、子宮がんなど女性ならではのがんもあります。また、女性のがん死亡者数のトップは意外なことに大腸がんで、2番目が肺がんです。
 

大腸がんで死亡する女性が多い理由

女性のがん死亡率トップの大腸がんは、男性のがん死亡者数では第3位です。では、大腸がんは女性に多いがんかというと、そうともいい切れません。個人的には、その原因は大腸がんの検査方法にあると考えています。
 
お尻から大腸の中にカメラを入れて腸の中を見る大腸カメラは、女性にとってはかなり恥ずかしい、面倒な検査です。特に若い女性は、大腸カメラへの羞恥心から検査を敬遠しがちです。大腸がん検査のハードルの高さから女性の受診率が上がらず、その結果大腸がんの発見が遅れて、死亡に至るケースが多いと推察しています。
 

2. 油断は禁物!胃がんの死亡者は意外に高い

 

 
医療は日々進歩しています。がんになってしまったら大変ですが、特に胃がんは早期に発見すれば完治も望めるため、それほど怖くないというイメージが定着しつつあります。しかし、胃がんの死亡率は高く、胃がんのことを正しく理解することがとても重要です。
 
例えば、2019年に新たに胃がんと診断された人は12万4319人で、2020年の死亡者数は4万2319人でした。
 

40歳以降は胃がんの罹患率が急増

年齢別で見ると、胃がんの罹患者は30歳ぐらいから増え始め、いわゆる成人病年齢、生活習慣病ですね。これにあたる40歳、50歳になると急激に増えて、80歳がピークとなります。
 
それ以降は90歳、100歳と年齢が上がるにつれ胃がんの罹患者は、統計上は減っていきます。おそらく、胃カメラもバリウム検査も受けない年代のため、発見率が下がっているためでしょう。よほど胃が痛いとか、吐血したとかなどの症状がない限り、医師は100歳の人に胃カメラは絶対、勧めません。胃カメラをするリスクの方が怖いためです。そういう意味で超高齢者になると発見率が下がっているのだと思います。
 
また、20代以下の若い世代では、胃がんの罹患者はほとんどいません。なかでも10代以下、特に小学生以下の胃がんというのは、私の長い診療経験の中でも出会ったことがありません。その理由は「胃がんとピロリ菌の関係とは?がん検診で早期発見、胃がんリスク低減の対策を紹介」で詳しく説明します。
 
⇒リンク:「胃がんとピロリ菌の関係とは?がん検診で早期発見、胃がんリスク低減の対策を紹介」
 

胃がんの死亡率は年齢とともに上昇

一方、胃がんによる死亡者数は80歳以上の高齢者など、年齢とともに上がっていきます。これは手術や放射線治療、抗がん剤治療などに耐えられる体力が、高齢者にはないためと考えられます。医療が進歩し、人生100年時代になったといっても、人間の寿命は120歳ごろといわれています。ある程度の高齢になるとリスクを避け、積極的な治療が行われないのも、高齢者の死亡率が上がっている原因の一つでしょう。
 

3. がんが見つかるまでに10~20年かかる

 

 

私たちのからだは約60兆個の細胞からなっています。がんは、繰り返し行われる細胞のコピーミスから生まれます。多くのがん細胞は免疫細胞の攻撃によって死滅しますが、生き残ったがん細胞がやがて塊としての「がん」になっていくのです。
 
生き残ったたった1つのがん細胞は、1個が2個、2個が4個、4個が8個、8個が16個と、時とともに倍々ゲームのように増えていきます。最初はたった1つだったがん細胞がどんどん増え続け、10年から20年かけて1cmほどの大きさの塊になります。検査で見つかるのは発症から10年以上経った1cm以上のがんで、1cm以下のがんは検査をしても見つけることは困難です。
 

早期がんで見つかるのはわずか1~2年だけ

がんが怖いのは、検査が可能な1cm以上の大きさになるまで10~20年もかかるのに、その後はたった1~2年で、その倍以上の大きさになってしまうことです。進行が早いがんであれば、1cmだったがんがわずか半年で10cmになってしまうこともあります。
 
初期のがんでは自覚症状がほとんどないことも多く、人間ドックや健康診断などで発見されたときには、すでにがんが進行していたというケースも少なくありません。早期がんのうちに発見できる期間は限られており、がんが進行してしまう前に、いかに早く見つけるかがポイントになります。健康診断や人間ドックなどを定期的に受けることが、がんの早期発見・早期治療につながります。
 
胃がんの原因や、原因トップであるピロリ菌の感染原因と対策、ピロリ菌抑制効果が期待される口腔ケアとバクテリアセラピーの関係について「胃がんとピロリ菌の関係とは?がん検診で早期発見、胃がんリスク低減の対策を紹介」で詳しく紹介しています。
  
2022年6月2日に開催された、総合内科専門医・循環器専門医・スポーツドクター、秋津壽男先生のセミナー内容を再構成し掲載しました。
 

秋津壽男

大阪大学工学部 醗酵工学科 卒業
酵母醗酵による核酸生成と回収について研究
和歌山県立医科大学 卒業
日本内科学会認定総合内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本禁煙学会認定禁煙専門指導者

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