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口が乾燥する原因は?ドライマウスの対策・予防でお口から健康に!

常に喉や口の乾きや乾燥を感じている方は、もしかしたらドライマウスの症状が現れているのかもしれません。

特に最近は、外出する際に常にマスクをつける生活が習慣になりつつあるため、息苦しさから口呼吸になってしまい、それが乾燥を招いてしまうこともあります。

口の中が乾燥してしまうと、唾液の分泌量が低下し、口臭や虫歯の原因につながります。

では、ドライマウスはどのように対策したらよいのでしょうか。その原因から予防方法までを詳しく解説します。

1. ドライマウス(口腔乾燥症)とは?

 

ドライマウスとは、唾液の分泌が低下し、口内が乾燥した状態のことです。広い意味では、口内の乾燥を自覚する症状のことを指します。

ドライマウスにはどのような症状があるのか、原因とともに詳しく解説します。

 

ドライマウスの症状

ドライマウスは病気ではなく、口や喉の乾燥で起こる症状全般のことを指します。

中高年世代の女性に多く起こる症状であるといわれていましたが、最近ではさらに若い世代の方でも症状を訴える人が増えています。

 

体内の常在菌は全身に存在していますが、特に腸と口に多くの菌が住みついていることから、菌活で腸内環境を整えることが推奨されています。また、体内菌はバラバラに存在するのではなく、善玉菌、悪玉菌、日和見菌が集団になってフローラ(細菌叢)を形成し、全身の状態をコントロールしているといわれています。

フローラのバランスを善玉菌優勢に保つことで菌からさまざまな恩恵が得られるため、健康を保つためには、「腸内フローラ」と「口内フローラ」の状態をいかに整えるかが大切とされているのです。

 

●口や喉が常に乾く

●口の中がネバネバする

●食べ物が飲み込みにくい

●水分をよく摂取するようになった

●口臭が気になる

●虫歯・歯垢が増えた

●味がわからない

●舌がヒリヒリする

●喋りづらい

●入れ歯やインプラントなどで口が傷つく

 

これらがドライマウスの主な症状です。特に味覚障害や喋りづらくなってしまうといった症状は日常生活に支障をきたしてしまうため、早めに医療機関を受診しましょう。

ドライマウスの診察は基本的に歯科で行われていますが、中には「ドライマウス外来」という専門外来を併設している病院もあります。

 

 

唾液の役割

唾液は一般的に1日に1~1.5Lほど分泌 されるといわれています。

分泌量は個人差があり、年齢や性別、季節、服薬状況などの要因によって左右されます。分泌される唾液は、食事など刺激が起こることで分泌される刺激唾液と、何もしていないときに分泌される安静時唾液の2種類です。

この2種類が滞りなく分泌されていることで、常に口内が潤っている状態になります。

 

口の中が唾液で満たされることにより、歯や食べ物によって受けるこすれなどの刺激を軽減し、保護します。

また、唾液には抗菌作用を含む成分が含まれているため、細菌が体内に侵入するのを防ぎ、食べかすを洗い流す作用や、食べ物の消化を手助けする働きなどさまざまな作用があります。そのため、唾液の分泌量が低下すると、ドライマウス以外にも体内でトラブルが起こる要因になることがあります。

 

ドライマウスになる原因

ドライマウスになる原因としては、どのようなものが挙げられるのでしょうか。ここでは代表的な原因について解説します。

 

●加齢・ホルモンによるもの

加齢により唾液の分泌量は低下します。他にも、自律神経の乱れや女性ホルモンの減少などが引き金となり、分泌量が減少する可能性があります。
また、生理や妊娠、出産、授乳などで体内の水分量が減少しやすい女性の方が、ドライマウスになる要因が多くなると考えられています。

 

●ストレス

ストレスや緊張を感じることも、唾液の分泌を低下させる要因になります。

例えば、大勢の人の前で話すときや面接など、緊張感のある場面では口が乾くことがあります。これは、ストレスや緊張により自律神経が乱れ、交感神経が優位になることにより、唾液の水分泌が減少してしまうことが原因です。

 

●薬の副作用・病気によるもの

薬や他の病気が要因となってドライマウスを引き起こしている可能性もあります。

花粉症などの抗アレルギー薬や抗うつ剤、血圧降下剤など一部の薬剤には副作用に「口渇」が挙げられています。薬を飲み始めてからドライマウスを感じるようになった方は、薬の副作用を確認したり、医療機関で相談したりすることを検討しましょう。

また、唾液腺障害やシェーグレン症候群、糖尿病、腎臓の疾患などが要因となり、ドライマウスとなる可能性も考えられます。

 

●無意識に口呼吸をしている

通常人間は、鼻で呼吸をすることにより、鼻の器官を通った、湿ったきれいな空気を体内に届けます。

しかし、鼻が詰まっていたり、マスクによる息苦しさがあったりすると、無意識に口で呼吸をしている場合があります。口呼吸をすると、乾燥した空気が直接取り込まれるため口内が乾燥し、ドライマウスを引き起こす要因となるのです。

2. ドライマウス チェックリスト

緊張や精神的な負荷がかかったときに起こる一時的な口の乾燥は、生理的な反応ですが、ドライマウスになると乾燥を継続的に感じるようになります。

「もしかしたらドライマウスかも」と思われた方に向け、ドライマウスの症状に当てはまるリストを作成しました。チェックリストに基づき、セルフチェックをしてみましょう。

 

□ 口の渇きが長期間(3カ月以上)続いている

□ 気がつくと水をよく飲んでいる

□ パンやせんべいなど乾いたものが食べづらい、水で流さないと飲み込めない

□ 寝ているときでも口の乾燥感が気になって起きてしまう

□ 唾液がネバネバしている

□ リップクリームが手放せないほど唇が乾燥している

□ 舌や口の中がヒリヒリとして痛みを感じる

□ 食べ物の味をあまり感じない、以前より薄くなったように思う

□ 醤油や唐辛子、みかんなどを食べると刺激を感じる

□ 顎の下がいつも腫れているような感じがする

□ 口臭が気になる、指摘されるようになった

□ 口の中が傷つきやすい

□ 虫歯や口内炎、歯周病にかかりやすくなった

 

あくまで一例ですが、多く当てはまるほどドライマウスの可能性が高くなります。

3. 口の乾燥を防ぐには

セルフチェックを行ったところで、実際にドライマウスになるのを防ぐ対策について解説します。

ドライマウスの予防には、口の中を乾燥させない環境を作ることが重要です。

 

こまめな水分補給

口内の渇きを感じるようなら、少しずつでよいので定期的に水分補給をするように心がけます。特に冬場は空気が乾燥するだけでなく、水分補給の頻度も落ちがちです。体内の水分不足は唾液の分泌量を低下させるため、意識して口の潤いを保ちましょう。

室内では加湿器などを利用して湿度を上げ、外出時にはペットボトルやタンブラーを持ち歩くようにして、常に水分補給ができるようにすると効果的です。

ただし、利尿作用のあるアルコール類やコーヒーなど、カフェインが多く含まれているものは、唾液の分泌量を低下させる恐れがあるため、取りすぎないようにしましょう。

 

唾液腺マッサージ

口の周りの筋肉を活発に動かすことは、唾液の分泌をスムーズに行うために重要です。舌を左右に動かしたり、伸ばしたり引っ込めたりといった動作を繰り返すことで筋力強化につながります。

また、唾液を出す器官である唾液腺をマッサージすることも効果的です。耳や顎の下をゆっくりもみほぐすことで、唾液の分泌量アップが期待できます。

 

●耳下腺(耳の下の部分)

耳の前から奥歯のあたりをクルクルと円を描くようにマッサージします

●顎下腺(下顎の骨の内側の柔らかい部分)

耳の下から下顎の骨に沿って順番に押します

●舌下腺(下顎の先の尖った部分の内側)

顎の下を親指で押すようにゆっくりとマッサージします

 

ただし、もし持病のある方はセルフマッサージで症状が悪化する可能性があるため、主治医と相談の上、マッサージを行ってください。

 

食べるときはよく噛んで

唾液は、噛むという刺激でも分泌量が多くなります。食べ物が飲み込みづらくても、すぐに水で流し込もうとせず、ゆっくりと噛んで飲み込むことで唾液が分泌されます。

あまり噛まなくてもよいやわらかいものばかり食べていると、口まわりの筋肉が衰えてしまうため、ガムを噛むことを習慣づけるのもよいですし、普段食べているメニューに噛みごたえのある食材を追加するのもおすすめです。例えば小腹がすいたときの間食を、ナッツやせんべい、かりんとうなど硬い食べ物にすると唾液の分泌を促すことができます。

 

年齢とともに唾液の分泌は減少するため、普段の食事を工夫し、意識して分泌量を増やすことが重要です。

ドライマウスは、食べ方以外にも生活習慣や環境などの影響もあるといわれています。食生活や生活のリズム、運動習慣、喫煙、飲酒、ストレスなど、悪影響を及ぼすと思われる生活習慣を見直すことも効果的です。

 

乾燥対策のお薬や保湿グッズを利用

乾燥した口内の粘膜を保護するために、保湿ケアを取り入れてみるのもひとつの方法です。

まず真っ先に試したいのが、うがいです。うがいは口内に潤いを与え、清潔を保ちます。

口腔ケアの保湿用ジェル状やデンタルリンスは、口内に保湿剤を行き渡らせることで、潤いを保つ環境を作りやすくします。スプレータイプの保湿剤は外出先でも手軽に使えて便利です。

唇や口角の乾燥が気になる場合は、保湿成分の高いリップクリームやオイルをこまめに塗りましょう。

また、シェーグレン症候群などの疾患がある場合は、唾液分泌促進薬や漢方薬が用いられることがあります。二次的障害の可能性がある場合は、自己診断せず医療機関を受診するように心がけましょう。

 

 

4.口の乾燥が引き起こすトラブルとその対策

乾燥によって引き起こされる口内環境の悪化は、ドライマウス以外のトラブルを起こす可能性があります。口の中が乾燥することにより起こりやすいトラブル例と対策について解説します。

 

歯周病が引き起こすさまざまなリスク

 

唾液には抗菌作用も含まれており、口内の雑菌や細菌の繁殖を防ぐ役割を持っています。

歯周病菌や虫歯菌の侵入を妨げ、再石灰化によって進行を抑えることができます。しかし、唾液の分泌が減少し乾燥が進むと、虫歯や歯周病・口臭の悪化といったトラブルが引き起こされます。

また、体と外の世界をつなぐ「口」という器官は、多種多様な細菌が棲み着いています。細菌はそれぞれ固有で集団(フローラ)を形成し、人間の健康維持に大きく関わっているのです。

 

口内のフローラ環境が悪化すると、虫歯菌や歯周病菌に代表される悪玉菌が勢力を増し、さまざまな疾患を引き起こすきっかけになります。悪玉菌の勢力を抑えるためには、善玉菌を増やして口内フローラを整える環境づくりが必要です。

虫歯や歯周病によるトラブルは、口内にとどまるものだけではありません。炎症が起こった場所から血液を巡って全身に広がる恐れがあります。

その結果、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、骨粗鬆症、低体重児出産などの疾患の要因になるといわれています。歯周病は慢性疾患のため、治療をしなければ改善されません。

 

バクテリアセラピーでお口を健康に!

 

口内環境を悪化させないためにも、唾液の分泌を促して口の中の乾燥を防ぐ対策は大切です。

その上で、口内環境を整えるために、毎日の丁寧な歯磨きの他に、歯科で定期的なクリーニングをすることが重要です。虫歯や歯周病、口臭の原因になる悪玉菌は、歯の隙間にもこびりついています。ブラッシングや歯間ブラシ、デンタルフロスなどでホームケアをし、掃除しきれない部分は定期検診で入念にケアをしてもらいましょう。

 

口内フローラのバランスを整えるためには、近年注目されている「バクテリアセラピー」と呼ばれる健康法も有効です。

バクテリアセラピーとは、ヨーロッパで生まれた予防医学で、善玉菌を摂取することで体内の菌バランスを整え、体質を変える細菌療法のことです。バクテリアセラピーによって善玉菌のフローラを増やし、悪玉菌が住みにくい環境にすることで、口内の菌バランスを良好に保ち、歯周病や虫歯・口臭といったトラブルの予防が期待できます。

5. まとめ

唾液の分泌が低下して口内が常に乾燥している状態をドライマウスといいます。加齢やストレス、疾患、口呼吸などさまざまな要因によって起こるため、気になる方はセルフチェックをして対策を講じましょう。

口内の乾燥を防ぐためには、こまめな水分補給や唾液腺のマッサージ、よく噛む、乾燥対策グッズなどを利用することが有効です。また、口の中が乾燥してしまうと、ドライマウス以外にも歯周病や虫歯、口臭の悪化などのトラブルが発生する可能性があります。

特に歯周病が引き起こす疾患のリスクは高いため、口内の環境を整える必要があります。

生活習慣に気を付けたり、バクテリアセラピーを実行したりすることで、口内環境を整え、健康を維持できるようにすることが重要です。

 

監修:若林 健史 先生

若林健史|Kenji Wakabayashi

歯科医師歯周病専門医若林歯科医院院長

1982年日本大学松戸歯学部卒業。
1989年東京都渋谷区代官山にて開業。
2014年医院を代官山から恵比寿南に移転。
2016年東京都港区南青山にてオーラルケアクリニック青山開院。
2017年日本大学客員教授。

日本歯周病学会理事・専門医・指導医、日本臨床歯周病学会認定医・指導医・歯周インプラント指導医、米国歯周病学会会員等を務める。
歯周病専門医・指導医として歯科医師向けや一般市民向けの講演を多数行っている。

https://wdental.jp/

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