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日和見菌とは?腸内細菌のバランスを整えて健康になろう

腸内細菌には、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類があり、それぞれ体に与える影響が異なります。腸内細菌のバランスが崩れると、さまざまな病気の原因にもなり得ます。特に、日和見菌は腸内の優勢な菌に味方する作用があるため、腸内環境を左右する重要な菌です。
では、腸内環境を整えるにはどのようにすればよいのでしょうか。この記事では、日和見菌とは何かをはじめ、日和見菌の役割、腸内フローラのバランスの重要性、腸内環境を整える方法についてご紹介します。

1. 日和見菌とは

そもそも日和見菌とは何かを知るため、どのような役割があるのか、またどんな種類があるのかを解説します。
 

日和見菌の役割

腸内細菌にはさまざまな種類がありますが、人に及ぼす作用によって大まかに「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分類されます。これらの名称はいわゆる俗称であり、学術的な用語ではありません。それぞれの細菌がどのような役割を持っているのか、以下に紹介します。

 
善玉菌
人に対して有用に働く細菌を善玉菌と呼んでいます。善玉菌は、乳酸や酢酸、酪酸などの有機酸を生成するため、腸内を弱酸性にして悪玉菌の増殖を抑え、腸内バランスを整えます。また、腸の運動を活発化したり、食中毒菌や病原菌による感染を予防したり、発がん性のある有害物質の産生を抑制したりなど、さまざまな働きをします。
代表的な菌に、乳酸菌やビフィズス菌があります。

 
悪玉菌
悪玉菌にはたんぱく質を分解して、消化などを助ける役割もありますが、増えすぎると有害物質を作り出し、腸内をアルカリ性にして腐敗を引き起こします。
代表的な菌には、ウエルシュ菌やブドウ球菌などが挙げられます。

 
日和見菌
腸内環境に応じてよい働きも悪い働きもする菌です。腸内細菌の7割を占めており、善玉菌が優位な状況では善玉菌の味方をして腸内で発酵します。一方、腸内で悪玉菌が優勢となった場合は悪玉菌に加勢し、腐敗を引き起こします。

腸内環境をコントロールするためには、善玉菌の数を増やし、日和見菌を味方につけることが重要です。

 

日和見菌の種類

代表的な日和見菌には、以下があります。
 

・バクテロイデス
・大腸菌(非病原性)
・ファーミキューテス
・ユウバクテリウム
・連鎖球菌

 
日和見菌は健康な状態では異常をきたしませんが、免疫機能が低下すると腸内で悪い働きをします。場合によっては、感染症を引き起こすこともあり、この病気を「日和見感染症」と呼びます。日和見感染症は、免疫機能が正常の人に生じる感染症と異なり、重症化する恐れもある病気です。

2. 腸内フローラのバランス


日和見菌を善玉菌の味方にするには、腸内フローラについて知る必要があります。ここでは腸内フローラの概要や、最適なバランス、腸内フローラが乱れる原因について説明します。

 

腸内フローラとは

腸内にはさまざまな細菌が生息しており、その数は1,000種類、500兆個以上といわれています。そのなかでも、大腸に生息している菌を「腸内細菌」と呼びます。
腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌などのさまざまな細菌で構成されており、絶えず増殖しながら全身に影響を及ぼしています。その様子がお花畑のように見えることから「腸内フローラ」、または「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼ばれています。

腸内細菌の形成パターンは、食生活や生活環境などによって人それぞれ異なります。腸内にほぼ細菌がいない状態で生まれた赤ちゃんは、母親や周囲の環境から細菌をもらいながら数や種類を増やしていきます。腸内フローラの基礎となるものは3歳ごろまでに形成されますが、細菌の量やバランスは年齢や生活環境の変化に影響を受けるといわれています。

 

腸内フローラのベストなバランスは?

腸内フローラの最適なバランスは、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割といわれています。
悪玉菌が優勢になると、たんぱく質を分解し腐敗させ、悪臭ガスや毒素を生成します。これらが体内に吸収されると、内臓に負担を与えたり、老化を促進させたりして、場合によってはさまざまな病気を引き起こすこともあります。ただし、悪玉菌は、肉類などのたんぱく質を分解して便として処理する機能もあるため、すべての悪玉菌を排除してはいけません。健康を保つためには、腸内フローラのバランスを調整することが大切です。

 

腸内フローラのバランスが乱れる原因とは

腸内フローラのバランスが乱れる原因には、以下のようなものがあります。

 
ビフィズス菌が減少する
乳児期には、善玉菌であるビフィズス菌が100億個以上生息しているといわれています。しかし、年を重ねるにつれてビフィズス菌の数は減少し、50~60歳頃には1億個ほどに激減します。善玉菌の数が大幅に減少することで、腸内フローラのバランスが崩れるのです。

たんぱく質の多い食生活を続ける
脂肪や肉を中心としたたんぱく質の多い食事をしていると悪玉菌が増殖します。悪玉菌が増加すると、肌荒れや免疫力の低下だけではなく、便秘や生活習慣病を引き起こす恐れもあります。

不規則な生活や精神的なストレスを受ける
腸は自律神経と密接な関わりがあります。自律神経には、活動時に優位な「交感神経」と休息時に優位な「副交感神経」があり、不規則な生活やストレスなどによって自律神経が乱れると、腸の消化機能が低下するなど腸内環境にも影響します。

抗生物質を過剰に使用する
病気の治療に必要な抗生物質ですが、病原菌だけでなく、善玉菌など無害な菌も排除してしまうことがあります。そのため、結果として腸内バランスが崩れてしまうというケースも少なくありません。

3. 腸内環境を整えるには

  

ここでは、腸内環境を整える方法について説明します。

 

食生活を見直しバランスよく食べる

まずは、日々の食生活を見直すことが大切です。肉や卵などの動物性たんぱく質だけでなく、野菜や発酵食品、魚などをバランスよく摂取しましょう。
また、「プロバイオティクス」を取り入れることも有用です。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を含んだ食品のことで、ヨーグルトやぬか漬け、納豆、キムチ、味噌、チーズのような発酵食品などが挙げられます。
さらに、プロバイオティクスの働きを助けるためには、善玉菌のエサとなる食品を取ると効果的です。この食品を「プレバイオティクス」といい、アスパラガス、キャベツ、ゴボウ、バナナ、はちみつなど食物繊維やオリゴ糖を含んだ食材の摂取がおすすめです。

なお、プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を摂取すること、またその両方を含む食品や製品を取り入れることを「シンバイオティクス」と呼び、より高い効果が得られるとされています。

また、食品で摂取することが難しい場合は、錠剤やタブレットなどのサプリメントから補うことも可能です。忙しい人や食生活が偏りがちな人は、検討するとよいでしょう。

 

規則正しい生活を心がける

前述したように、腸は自律神経と密接な関係があります。そのため、自律神経のバランスが崩れると腸の働きも乱れ、便秘や下痢につながりやすくなります。起床時間が毎日異なる、夜更かし、食事の時間や量がバラバラなど、不規則な生活をしている方は要注意です。自律神経を整え、腸内環境を良好に保つには、以下のような生活を心がけましょう。

・朝食を毎日摂る
・夕食は就寝の3時間前に
・質のよい睡眠を取る

 

適度な運動を取り入れる

規則正しい生活をして腸内環境を整えるためには、適度な運動も大切です。
例えば、デスクワークの場合、歩くことが少なく、長時間同じ姿勢でいることが多く、運動不足に陥りがちです。また、スマートフォンの見すぎも禁物です。これらが続くと、体が固まり、肩こりや眼精疲労からよい睡眠を取れない恐れがあります。
日常生活に運動を取り入れるために、仕事中でも意識的に席を立ったり、時間を決めて休憩を取ったりして体を動かしましょう。ほかにも、以下のような方法が有用です。

・深呼吸をする
・スタンディングデスクで仕事をする
・エレベーターなどを使わず階段で移動する

 

抗生物質の服用期間を守る

腸内細菌は、抗生物質の服用などで大きく変動しますが、やがて元に戻ります。ただし、抗生物質を過剰に使用すると、害のない細菌にまでダメージを及ぼす恐れがあります。また、医師に診断された服用期間を守らず、不規則に抗生物質を飲んでいると、害のある細菌を退治しきれません。さらには、残った細菌から、抗生物質耐性菌が生まれる可能性もあります。

医療機関で抗生物質を処方されるのは、細菌による感染症の恐れがある場合です。そのため、医師には「何の感染症の疑いがあるのか」を確認しましょう。また、処方された抗生物質は、用法・服用期間を正しく守ることが大切です。

4. まとめ

腸内に生息している細菌には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類があり、そのなかでも日和見菌は善玉菌にも悪玉菌にもなりうる重要な菌です。これらの菌のバランスによって腸内フローラは保たれています。
腸内フローラの乱れは、加齢や食生活のほか、不規則な生活やストレスも大きな要因となっています。腸内環境を整えるには、食生活を見直したり適度な運動を心がけたり、何よりも規則正しい生活を意識することが大切でしょう。この記事を参考に、プロバイオティクスやプレバイオティクスも適切に取り入れながら、バランスの取れた腸内環境で健康な毎日を過ごしましょう。

監修:藤井 祐介
博士(農学)
(ふじい ゆうすけ)

所 属 : オハヨー乳業株式会社
マーケティング戦略本部 研究開発部 基礎研究室 課長

◇略 歴◇
2000 年 3 月 茨城大学大学院 農学研究科 修士課程修了
2000 年 4月 オハヨー乳業(株)入社。
焼きプリン製造に従事
2003 年 4月 オハヨー乳業 企画開発部に異動
研究員として乳酸菌の機能性研究や商品開発に従事。
2019 年 9月 岡山大学大学院 環境生命科学研究科 博士後期課程修了
博士(農学)
~現在 オハヨー乳業 基礎研究室 研究員として乳酸菌・ビフィズス菌の機能性研
究をはじめ, 腸内細菌叢と疾病との関係についても研究を行っている。

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