歯槽膿漏とは、歯と歯肉の境目に潜んでいる細菌によって、歯茎や歯槽骨などの歯周組織が炎症を帯びて、赤くなったり腫れたりする病気です。
歯槽膿漏は歯周病とも言われますが、歯槽膿漏が進行すると、歯を支えている歯槽骨が溶けて、抜歯しなければいけなくなってしまいます。
日本人の30歳以上の約8割が歯槽膿漏(歯周病)にかかっているという調査結果もあり、国民病ともいえます。
そこで今回は、歯槽膿漏を効果的に予防する方法と、歯槽膿漏の原因や症状についてご紹介していきます。
1. 歯槽膿漏を予防する3つのステップ
歯槽膿漏は歯周病と同義ですので、基本的には歯周病の予防方法と同じになります。
具体的には、歯槽膿漏を予防するためには次の3つのステップが有効です。
ステップ1)食後に歯みがきをする
ステップ2)歯間ブラシとデンタルフロスを使う
ステップ3)定期的に歯科に通う
ステップ1)食後に歯みがきをする
食後に歯みがきをすることで、歯槽膿漏を予防できます。
食事の後は、食べカスが細かくなって歯と歯の間に残っています。この食べカスがやがて歯こうになり、歯こうに細菌が溜まることで歯茎に炎症を起こす原因となります。
食事をした後はすぐに歯を磨くようにし、それが難しい場合は、口の中をゆすぐようにうがいをしましょう。昼食後も含め、毎食後がオススメです。
ステップ2)1日1回は歯間ブラシとデンタルフロスを使う
1日1回は歯間ブラシやデンタルフロスを使ってみることをおすすめします。歯ブラシでは届きにくい場所や歯と歯の間の歯こうを掃除するのに効果的です。
慣れていないと使いづらいかもしれませんが、一度使ってみると、歯間には想像以上に汚れがたまっていることに気づくでしょう。毎日1回でも続けていくことが大切です。
歯間ブラシやデンタルフロスを使うと、歯と歯の間が広がるように感じる方がいますが、それは歯間につまっていた汚れが落ちたり、歯肉の炎症が収まったりしたためです。正しく使うことで、歯間が広がる心配はありません。
ステップ3)定期的に歯科に通う
定期的に歯科に通うことで、汚れが溜まってしまいがちな歯並びの悪い場所や歯周ポケットの汚れを除去し、口腔内を清潔に保つことが可能です。
歯こうは毎日正しい歯みがきをしていれば除去できますが、自分では掃除できない細かい部分が疎かになっていることがあります。なるべくメンテナンスとして歯科で除去してもらうようにしましょう。
特に喫煙やアルコール摂取の習慣がある人は、歯が汚れやすいので、定期的に歯科に通いましょう。
バクテリアセラピーとは、優れた善玉菌によって、体内に存在する悪玉菌と善玉菌のバランスをコントロールする世界最先端の予防医療技術です。
口腔内の菌に働きかけるバクテリアセラピーは、歯槽膿漏予防に有効な手段と言えるのです。
2. 歯槽膿漏の原因
生活習慣病予防のために厚生労働省が作成した健康情報サイトでは、歯槽膿漏(歯周病)の原因として次の4つを挙げています。
・局所的な原因
・全身的な原因
・生活習慣からくる原因
・社会心理的な原因(ストレス)
局所的な原因としては、口腔内の汚れがたまるものがメインとなりますが、全身的な原因には、妊娠やビタミン不足、薬の副作用、血液疾患、糖尿病などによる代謝障害などが含まれます。
また、食習慣、アルコール、たばこなどの生活習慣によるものや、心理的なストレスも免疫、炎症、回復機能を損なうために歯槽膿漏(歯周病)の原因として挙げられています。
歯槽膿漏(歯周病)の症状としては、まず歯と歯茎の間の歯周ポケットに歯こうがたまることで歯肉炎を引き起こし、さらに酷くなると歯こう内にひそむ細菌が歯槽骨(歯の根っこをささえる骨)を溶かしていきます。
3. 歯槽膿漏の症状
歯槽膿漏になると、歯肉から出血・膿が出る・腫れるなどの症状が出ます。
さらに歯周ポケットが深くなり、歯槽膿漏が進むと次第に歯がぐらついてきて、最終的には抜け落ちてしまうこともあります。
歯槽膿漏の症状が出たら歯科医師に診てもらうことが重要ですが、こうなる前に定期的に歯科に通うようにしましょう。
4. まとめ
日本人の30代以上で8割が罹患しているという歯槽膿漏(歯周病)。歯槽膿漏の予防は歯周病と同じように、毎日の歯みがきの習慣が大切です。
一方、歯みがきだけに頼っていても十分とは言えません。
歯科の専門医に定期的に通い、口腔内のクリーニングなどを続けることも、歯槽膿漏の予防のためにはとても重要です。
また、ロイテリ菌などの善玉菌を使ったバクテリアケアを行う歯科クリニックも増えてきているので、試してみるのもよいでしょう。
監修:森下 竜一 先生
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授
医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。
また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。
日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。