歯茎が腫れると痛み、出血などの違和感や痛みが出てきますが、歯茎が腫れる原因にはどういったものがあるのでしょうか。
そこで今回は、歯茎が腫れる原因や、腫れやすい人の特徴、根本的な対処法などについてまとめてみました。
歯茎の腫れを放置しておくと、口臭や歯が抜け落ちる原因にもなりかねませんので、しっかりと対策していきましょう。
1. 歯茎の腫れの主な原因
口腔ケアをきちんとしていない場合はもちろんですが、その他に歯茎が腫れる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
まずは、歯茎の腫れる主な原因を4つご紹介します。
原因1)歯周病
歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性の疾患です。
歯と歯肉の境目の清掃が不十分である場合、そこに歯こうが溜まって歯肉炎となり、歯茎が腫れてしまいます。
また、歯周病は進行すると歯槽骨(歯の根っこをささえる骨)が溶けて歯がぐらぐらするようになるため、抜歯しなければならなくなることもあります。
原因2)根尖病巣(こんせんびょうそう)
根尖病巣は、むし歯が歯髄にまで感染した場合や、歯の神経を取った歯が感染をした場合に、根尖(歯の根の先)に膿の袋ができた状態のことをいいます。
痛みがない時もありますが、身体の抵抗力が落ちたりした時に、急に腫れと痛みが生じることがあります。
原因3)親知らず
口の奥の方の歯茎が腫れている時は、親知らずが原因となっている場合があります。
親知らずは、斜めに生えていることが多く、歪んだ歯茎の間に細菌が溜まってしまうと智歯周囲炎(ちししゅういえん)を引き起こして腫れることがあります。
原因4)口内炎
歯茎に口内炎があると、腫れや痛みを生じることがあります
口内炎は1つ2つできても気にしない方が多いですが、複数できたり、長期間治らない場合は、口腔がんなど深刻な状態に陥っている可能性もあるため、早めに口腔外科などで検診するようにしましょう。
2. 歯茎が腫れやすい人の特徴
歯茎が腫れる原因がわかったところで、ここからは歯茎が腫れやすい人の特徴についてみていきましょう。
先ほどご紹介した原因に当てはまらなくても、歯茎の腫れを感じることが多い場合は、腫れやすい特徴に該当している可能性があります。
普段の生活習慣や口腔ケアに気を付けることで、歯茎の違和感を抑えるようにしましょう。
特徴1)口腔内が清潔でない人
毎日の歯みがきをしていないのはもちろんですが、デンタルフロスや歯間ブラシを使ったケアをしていないと、歯と歯の間の汚れを落としきれず、歯周ポケットなどに細菌が停滞して歯茎が腫れてしまうリスクが高まります。
歯みがきだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシも使用して、口腔内を清潔に保つようこころがけましょう。
特徴2)栄養が偏りがちな人
偏った食生活をしていると、腸内や口腔内の悪玉菌が優位になり、歯みがきなどのケアをしっかりしていても、歯茎の腫れを引き起こす原因となります。
普段から野菜を十分に摂取するなど、食事バランスは意識するようにしましょう。
難しい場合は、サプリメントを用いて栄養バランスを整えたり、善玉菌優位な環境にしていくのも1つの手です。
特徴3)喫煙している人
喫煙には、唾液の分泌を抑制してしまう作用があり、唾液による自浄作用がうまく機能しなくなることで、口腔内が不衛生な状態になってしまいます。
唾液による自浄作用が減ってしまうと、歯周病の原因となる歯こうができやすくなります。また、喫煙は血管を収縮させる働きもあるため、歯茎の血管が収縮し抵抗力が弱くなることでも、歯周病を悪化させることにつながります。
その他の特徴
過度なストレスや食べものを噛む頻度が少ないことも、歯茎が腫れやすい原因となります。
ストレスは、噛み締めや唾液分泌量減少につながり、免疫力低下が低下し歯周病菌の繁殖を許してしまうことがあります。また、白血球が増加することで活性酸素が急激に発生し、炎症につながることもあります。
全くストレスがない生活というのは難しいかと思いますが、自分なりの方法で適度にリフレッシュして、うまく付き合っていく工夫をしましょう。
また、食べ物を噛む回数が少ないことも唾液の減少につながります。
食事の時間を意識的に長くしたり、ガムを噛むなどし、意識的に噛む習慣を身につけましょう。
3. 歯茎の腫れの根本的な対処法
歯茎の腫れを治すには、痛い部分を冷やしたり痛み止めを飲むといったその場しのぎの対処ではなく、根本的な対処が必要となってきます。
食生活、生活習慣の見直しを行うこと、口腔ケアをしっかりすることから始めてみてはいかがでしょうか。
ここでは、根本的な対処法として2つの口腔ケアをご紹介していきます。
1)念入りな口腔ケアを行う
歯ブラシや歯みがき粉を、自分の口腔環境に合ったものにした上で、丁寧な歯みがきを心がけましょう。
歯みがきの基本は、1〜2本ずつ丁寧に小刻みに磨いていくことです。1本につき20回程度、力を入れずに優しく磨き、食べかすや歯こうを落としていきます。
この時、歯ブラシの角度も大切です。毛先を歯に対して90度に当て、歯と歯茎の間では45度にするとキレイに磨くことができます。
歯を磨いた後は、デンタルフロスや歯間ブラシを使って、歯と歯の間のケアも忘れないようにしましょう。
また、本来であれば毎食後に歯みがきをすることが望ましいですが、忙しくて時間が取れないのであれば、口をゆすぐ習慣をつけるのもおすすめです。
口をゆすぐだけでも、細菌の繁殖を軽減するのに有効です。
2)バクテリアセラピー で口内環境を整える
バクテリアセラピーで口内環境を整えることも根本的な対処方法となります。
近年、優れた善玉菌を体内に取り入れて病気を予防するバクテリアセラピーが注目されていますが、その中でも人体に有益な影響を与える善玉菌が特に人気です。
悪玉菌の発育を抑え、善玉菌の働きをサポートする働きがある菌を取り入れることはとても有用です。
善玉菌を使って、口腔内の菌環境(口内フローラ)を正常化させると、歯茎の腫れの原因となる歯周病などを予防することができます。
4. それでも改善しない場合は歯科・口腔外科へ
これまでご紹介した方法で改善しない場合やすぐに歯茎の腫れを治したい場合は、歯科または口腔外科で歯科医に相談しましょう。
専門家から口腔環境の検診を受け、適切な処置やアドバイスを受けることをおすすめします。
5. まとめ
歯茎の腫れは、口内環境の異常を示すわかりやすいサインです。
歯周病などが原因とわかっている場合や、ストレスがたまっているなど歯茎が腫れやすい人の特徴に該当している場合は、バクテリアセラピーで口内環境を整えるといったセルフケアを心掛けましょう。
セルフケアを行っても改善しない場合は、歯科医による適切な処置を受けてください。
監修:森下 竜一 先生
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授
医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。
また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。
日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。