予防医学からダイエットまで、今や菌活はさまざまなシーンで注目を集めています。発酵食品や乳酸菌飲料などに含まれる豊富な栄養素による整腸作用などが、健康やキレイに役立つと期待されているのです。
その一方で、菌活に興味があるものの、「そもそも菌活にはどんな効果があるの?」「菌活で健康的になりたいけれど、どうすればいい?」「菌活でダイエットできるって本当?」など、疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、そもそも菌活とは何か、また、菌活に利用される主な6つの菌とその特徴、それらを取り入れたおすすめの食生活、菌活のやり方やポイントなどについて詳しくご紹介します。
最後まで読むことで、菌の効果をきちんと理解した上で、ダイエットや美容に菌活を生かすことができるはずです。
1. 菌活って何をするの?
納豆やきのこ、ヨーグルトなど菌の働きで作られた食品を積極的に摂取して、体内の善玉菌を増やし、菌のバランスを整える健康法を「菌活」といいます。
日本では「菌活」という言葉が有名ですが、欧米では菌活に近い「バクテリアセラピー」という健康法が知られています。優れた善玉菌(プロバイオティクス)を摂取し、体内菌のバランスをコントロールするというもので、最先端の予防医学として注目され、導入している医療機関も多数あります。
ここでは、菌活の必要性から菌活とダイエットとの関係まで詳しくご紹介します。
なぜ菌活(腸活)は必要なの?
菌活では、体に良い菌が含まれている食物を積極的に食事に取り入れ、腸内環境のバランスを整えていきます。人体にはおよそ1000種以上、個数にすると500兆個以上もの常在菌が存在しており、常在菌には「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類があります。
無数に存在する常在菌のうち、悪玉菌が増え、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れてしまうと、便秘や肌荒れなど健康への悪影響が生じてしまうのです。
体内の常在菌は全身に存在していますが、特に腸と口に多くの菌が住みついていることから、菌活で腸内環境を整えることが推奨されています。また、体内菌はバラバラに存在するのではなく、善玉菌、悪玉菌、日和見菌が集団になってフローラ(細菌叢)を形成し、全身の状態をコントロールしているといわれています。
フローラのバランスを善玉菌優勢に保つことで菌からさまざまな恩恵が得られるため、健康を保つためには、「腸内フローラ」と「口内フローラ」の状態をいかに整えるかが大切とされているのです。
菌活とともによく聞く言葉として「腸活」があります。食生活や生活習慣を通じて腸の働きを整えることを指し、菌活とほぼ同じ意味合いで使われています。
腸は「第二の脳」と呼ばれることもあり、腸内フローラのバランスが崩れてしまうと、悪玉菌が増えてさまざまな疾患に深く関係してくるとされています。
したがって、菌活などを通じて腸内環境や口内環境を整えることが、代謝や免疫力を高めることにつながり、健康な体づくりの第一歩となります。
菌活ダイエットってよく聞くけれど…
実は、菌活そのものがダイエットに直接影響を与えている科学的根拠は、現時点では証明されていません。
ただし、菌活には低カロリーで便通を促す効果がある食品が多く利用されるため、ダイエットに興味がある多くの人が菌活に関心を寄せています。その代表的な食品が、きのこ、納豆、そしてヨーグルトなどです。
例えば、きのこはビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な上、成分のおよそ9割が水分のため脂質がほぼゼロで、ダイエット向きの低カロリー食材です。
美容と健康に良い影響を与えるこれらの食品の多くは、古くから日本食のひとつとして私たちの生活に深く根ざしています。そのため、特別な努力をすることなく食に取り入れることが可能であり、比較的簡単に食材を手に入れることができます。
さらに、納豆やヨーグルトなどは食物繊維と同時に摂取することで便通がより促される効果があり、腹持ちの良い食物繊維と組み合わせることでより良い効果を得ることができます。
2. 菌活に取り入れやすいおすすめの菌は?
善玉菌として代表的な菌が「乳酸菌」です。乳酸菌が多く含まれる食品はヨーグルトで、有名なビフィズス菌は乳酸菌のひとつです。その他にも、チーズ・漬物・日本酒などの発酵過程で乳酸菌は用いられます。
乳酸菌は大腸菌などの悪玉菌の働きを抑制し、体内菌のバランスを整える役割があります。これにより便通が改善される効果がある他、コレステロールを低下させたり免疫力を高めたりする働きがあるとされています。
乳酸菌
善玉菌として代表的な菌が「乳酸菌」です。乳酸菌が多く含まれる食品はヨーグルトで、有名なビフィズス菌は乳酸菌のひとつです。その他にも、チーズ・漬物・日本酒などの発酵過程で乳酸菌は用いられます。
乳酸菌は大腸菌などの悪玉菌の働きを抑制し、体内菌のバランスを整える役割があります。これにより便通が改善される効果がある他、コレステロールを低下させたり免疫力を高めたりする働きがあるとされています。
納豆菌
納豆菌は腸内環境を酸性化する働きがあります。腸内が酸性化すると善玉菌が繁殖しやすくなり、反対に悪玉菌の繁殖が抑制されるのです。
なお、納豆菌は食物繊維と共に摂取すると腸内での働きが活発になります。食物繊維を多量に含む納豆の摂取によって整腸作用が期待できます。
納豆菌は胃酸に強く、120℃を超えないと死なないほどで、さらには他の細菌やウイルスの活動を抑える働きがあるといわれています。
菌類(きのこ)
きのこはしいたけ・まいたけ・しめじ・エリンギなどに代表されるように、ヘルシーな食材として日本の食卓の定番として親しまれてきました。
きのこは酵母やカビと同じ真菌類に含まれ、食物繊維が豊富に含まれているため、納豆と同様に腸内の善玉菌を増やす助けをする働きがあります。
その他、しいたけに多く含まれるビタミンD2は骨の発育を促進させる作用があり、同じくしいたけのエリタデニンには血中コレステロールのうち悪玉コレステロール値を下げ、善玉コレステロール値を高める効果があるとされています。
麹菌
麹菌は蒸した米・麦、豆などに繁殖させ、日本酒・味噌・醤油・みりんなどの食品を作る際に利用されます。
麹にはさまざまな種類の酵素が含まれており、消化や吸収の促進、善玉菌を増やして腸を整える働きなどがあるとされています。
また、発酵の過程で生成された多量のビタミンB群は美肌や疲労回復、活性酸素の除去に役立ち、さらに、酵素によって生成された必須アミノ酸やミネラル、そして食物繊維が含まれているため、麹菌を含んだ食品は健康のみならず美容にも効果を発揮します。
酵母菌
酵母菌は真菌に分類され、さまざまな種類があります。日本酒・ワイン・パン・味噌・醤油などを作る際に使われています。
発酵食品に利用される酵母菌は、腸内で善玉菌として働きます。酵母菌には、悪玉菌の活動を抑制して腸内環境のバランスを整える作用があるとされています。
さらに、糖分やアルコールを分解する働きもあるため、カロリーの吸収量を低下させる作用も期待できるのです。
酢酸菌
酢酸菌はお酢を製造する際に利用される菌で、アルコールから酢酸を作る菌の総称です。使用するお酒の原料によって、できあがるお酢の種類が代わり、「純米酢」「黒酢」「りんご酢」などさまざまな種類があります。
お酢には防腐や殺菌などの働きがある他、花粉症などのアレルギー症状に改善効果があるとされています。
3.菌活で見直そう食生活!4つのポイント
さまざまな菌が含まれる食材を食卓に並べることは決して難しいことではありません。
では、これらの食材をただ食べていれば菌活が成功するかと言えば必ずしもそうではありません。菌活の食生活で意識したいポイントは「生きた善玉菌を腸に到達させる」ことです。詳しくご紹介します。
生きた善玉菌「プロバイオティクス」を取り入れる
腸内の善玉菌を増やす有効な方法が、健康に有益な働きをする「生きた善玉菌」とも呼ばれる「プロバイオティクス」の継続摂取です。
プロバイオティクスとは、体内に自然に存在している微生物のうち良い影響を与える微生物(生菌)のことで、有胞子性乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が該当します。
「胃液や胆汁などに耐え、生きて腸まで到達すること」「腸内で増殖できること」「食品などの形態で有効な菌数が維持できること」などの条件を満たした菌だけがプロバイオティクスと呼ばれます。
プロバイオティクスにあたる優れた善玉菌を含む食材にはヨーグルト・納豆・塩麹・ぬか漬け・キムチ・チーズなどが挙げられます。
しかし、これらの食品の中にある善玉菌が、腸内に到達し、ある程度の期間存在したとしても継続して住みつくことは難しいため、毎日プロバイオティクスが含まれる食品を摂取して、腸内に善玉菌を送り続けることが重要です。
善玉菌を増やすエサ「プレバイオティクス」を取り入れる
生きた菌そのものの作用によって腸内環境のバランスを整えるプロバイオティクスに対して、プロバイオティクスの働きを助ける作用のある物質をプレバイオティクスと呼びます。代表的なものは食物繊維やオリゴ糖などです。
善玉菌を増やす「エサ」ともいわれ、「消化管上部で分解・吸収されない」「腸内フローラを健康に働く構成へと改善する」などの条件があり、おすすめの食材としては、大豆・はちみつ・大根・サツマイモ・海藻類・こんにゃくなどがあります。
大腸の善玉菌にエサを届けて育てていくためには、オリゴ糖や食物繊維などの難消化性の栄養成分の摂取が重要です。
悪玉菌の大好物は控えめに
腸内の善玉菌を増やすことに成功したとしても、それ以上に悪玉菌が増えてしまうような食生活や生活習慣を送っているとせっかくの菌活の効果を感じることはできないでしょう。
悪玉菌は、肉類などのタンパク質が大好物です。肉類中心で野菜が少ない食生活をしていると悪玉菌が増えてしまいます。また、大量のアルコール摂取やタバコなども腸内細菌のバランスが崩れる原因になり得ます。
運動不足・寝不足など不規則な生活習慣も、腸の動きを妨げる原因となるため、食生活だけではなく、生活習慣の見直しも菌活を成功させるための大切な要素です。
菌活はサプリメントでも補える
菌活は継続して行うことが重要です。
食事だけでプロバイオティクスを摂取するのが難しい場合は、サプリメントを利用するのもひとつの方法です。
現在、さまざまなプロバイオティクスサプリメントが発売されていますが、選ぶ際には注意が必要です。含まれている菌の種類をきちんと確かめ、その菌が「生きて腸まで到達すること」「腸内で増殖すること」などプロバイオティクスの条件を満たしたものであるかどうかを確認しましょう。
4.腸と一緒にお口の中も菌活を!
口内にも腸内と同じく善玉菌や悪玉菌、そして日和見菌が存在しており、これらが口内フローラを形成しています。
腸内同様に善玉菌が優勢にある口内環境が望ましいのですが、体内への入り口となる口内は多様な細菌が繁殖しやすい過酷な環境です。
口内における悪玉菌の代表が「歯周病菌」と「虫歯菌」です。これらの菌が口内のバランスを崩してしまうと、歯周病や虫歯へとつながってしまいます。
特に、歯周病になると歯周病菌や毒性物質が血管を通じて全身へ広がり、糖尿病など生活習慣病や心疾患などさまざまな疾患に悪影響を及ぼす可能性があることがわかってきました。
口内フローラを整えるためには毎日の歯磨きと歯科医での定期的なメンテナンス、そして口内の悪玉菌を抑制するためにプロバイオティクスの摂取も有効であるといわれています。最近は、歯科を中心にプロバイオティクスを診療に導入するケースも増えています。
優れた善玉菌(プロバイオティクス)を活用して、体の内側から腸内環境や口内環境を整える「菌活」や北欧発の健康法である「バクテリアセラピー」を毎日の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
5. まとめ
プロバイオティクスの摂取などで腸内フローラを整えるにはおよそ2週間かかるといわれています。
菌活で最も重要なのは善玉菌が定着し繁殖する状態を維持することです。
まずは2週間、意識的に今回ご紹介した食品を食卓に取り入れてみてください。
何より続けていくことが重要となるため、無理せず自身のライフスタイルの中に菌活を取り入れて、体の内側から心身の健康を整えていきましょう。
参考リンク
厚生労働省
医療法人 安井歯科
飯塚病院
美味しいだけじゃない! 美容と健康に嬉しい効果のある麹の魅力
第一酵母株式会社
株式会社トウ・キユーピー
ハウス食品グループ本社株式会社
あなたの腸内環境は大丈夫?悪玉菌を増やさないためのチェックポイント
ホクト株式会社
世界の健康食”きのこ”
低カロリーで菌活|きのこらぼ|きのこで菌活
きのこで菌活とは|きのこらぼ|きのこで菌活
株式会社ルネサンス
菌興椎茸協同組合
全国納豆協同組合連合会
公益財団法人ダノン健康栄養財団
監修:樋口 俊哉 先生
消化器内科医として市民病院、総合病院で研鑽を積んだのち、2018年春に実家の医療法人聖俊会樋口病院副院長に就任。
病院併設の健診センターの立ち上げから携わり、センター長として活躍中。予防医療を中心に、早期発見、早期治療に対して全力で取り組んでいる。
また、2019年春にグロービス経営大学院を卒業しMBAを取得。次期院長として、病院経営においても手腕を発揮している。
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本肝臓学会専門医
日本医師会産業医
日本内科学会認定医
日本人間ドック認定医
人間ドック情報管理指導士