歯周病を予防する上で、歯科の定期検診はとても有効である以上に、必要不可欠と言っても過言ではありません。
一方で、「毎日きちんと歯磨きをしているのに、歯科へ通わなければいけないの?」「痛みがないから、セルフケアだけで問題ないのでは?」など、歯科に通う必要がないと感じている方も少なくありません。
そこで今回は、なぜ歯科の定期検診が大切なのか、歯周病予防と歯科検診についてご紹介していきます。
1. 歯周病と歯科検診
歯周病にかからないためには、歯科検診を定期的に受けることが効果的であり、多くの歯科医院や厚生労働省でも歯科検診を定期に受けることが推奨されています。
毎日丁寧に歯磨きをしていても、自分では完全にプラークを除去することは困難です。また、きちんと磨けているように見える歯でも、歯垢染色液などを使用してみると、まだプラークが残っているケースも多くあります。
日々のそうした積み重ねがいずれ歯石を生み出してしまい、歯周病を招く原因となります。痛みがあるときに歯科医院へ駆け込むのではなく、定期的に歯科へ通い、歯の状態を検査してもらうことが重要です。
2. 歯科医院で行うこと
歯科医院で行うことは、虫歯治療以外にもたくさんあります。
検診①.歯周ポケットの計測
検診②.クリーニング
検診③.歯磨き指導
検診①.歯周ポケットの計測
歯周ポケットの計測は、歯と歯茎の間に細い器具を入れて、溝がどれくらいあるかを計測するものです。
検診②.クリーニング
C(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)と呼ばれる、専門医が行う専門的なクリーニングもあります。歯石を取るだけのクリーニングと異なり、PMTCは歯石やプラークを除去したあと、プラークが付きにくくなるように表面を研磨していきます。
この研磨には専門の機械とフッ化物の入った研磨剤を使用します。
検診③.歯磨き指導
歯磨き指導は自分で歯磨きを行う際、適切にブラッシングを行えるよう、歯ブラシの角度なども指導してくれます。
定期的に歯科へ通っていても、毎日通うわけではないため、適切なブラッシングを行っていなければその間プラークをためてしまうことに繋がります。
基本的なことではありますが、非常に大切なことでもあります。
3. 自分だけでは歯周病予防が不十分になる理由
自分だけでは歯周病予防が不十分になる理由は、歯磨きの仕方が適切ではないためプラークが蓄積されてしまうことにあります。
プラークを気にして始めた丁寧な歯磨きやデンタルフロスも、徐々に雑になってしまったり、時には忘れてしまったりすることもあると思います。毎日完全にプラークを除去し、それを継続することはとても難しいことでもあります。
また、歯周ポケットの中にプラークや歯石がある場合、ブラッシングだけでは届かず除去できません。これは歯科医院で機械を使って除去してもらうことが必要になり、自分だけでは歯周病を予防することが困難となっているのです。
4. 自分でもやるべき歯周病予防法
定期的に歯科医院に通っていても、自分でもやるべき歯周病予防は、いくつもあります。
例えば、喫煙習慣のある方は吸い込んだタールのこびりつきがプラークの発生を助長させている場合があり、甘いものや柔らかいものばかりを食べている方は唾液量の減少が細菌の増殖に繋がっている場合もあります。
また、ストレスが溜まると免疫力が低下し、唾液の分泌量も減るため、歯周病になりやすくなると言われています。そのため、ストレスを溜めない生活習慣にすることも、歯周病予防に大切なことだと言われています。
日頃の生活習慣を見直すことも、歯周病予防にはとても大切で、毎日繰り返し口に入れるものや心の健康などにも気を配りましょう。
5. まとめ
毎日のケアとしてできることは、丁寧な歯磨きでなるべくプラークを除去していくことです。
加えて、デンタルフロスや歯間ブラシなども併用していくと、比較的多くのプラークを除去できる可能性が高まります。
ただ、それでも完全にプラークや歯石を除去することは困難ですので、専門医に診てもらい、プラークや歯石の蓄積を防ぐため定期的に通うことをおすすめします。
万が一歯石が付いてしまっても、軽度であれば除去も軽く済みます。歯周病という大事になる前に、定期検診を受けるようにしましょう。
監修 森下 竜一 先生
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授
医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米スタンフォード大学客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年より現職。米国高血圧評議会Harry Goldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文部科学大臣賞、大学発ベンチャー2016表彰文部科学大臣賞などを受賞。
また知的財産戦略本部本部員、健康・医療戦略本部戦略参与、日本万博基本構想委員、内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。
日本血管認知症症学会理事長の他、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会などで副理事長を務める。著書に「アルツハイマーは脳の糖尿病だった」(共著)など。